神戸市出身の巨人桜井俊貴投手(25)が「近くて遠かった甲子園」で人生初勝利を挙げた。躍動感あふれるフォームから内角を果敢につき、直球、カーブ、チェンジアップで緩急をつけ、7回5安打無失点。今季4勝目を挙げ、15日の後半戦開幕投手(対ヤクルト)に内定した。北須磨高(兵庫)では甲子園に無縁だった右腕の力投で、今季79試合目で初となる1-0の最少得点勝利。貯金は今季最多の16とした。

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おりゃー! っと、ボールに魂を込めた。0-0の6回2死満塁。鬼のような目をした桜井が、右腕をちぎれんばかりに振った。狙った外角からやや中には入ったが、阪神マルテのバットを押し込んだ。「気持ち、それだけです」。力のない遊ゴロでしのいだ。右拳を小さく握り、憧れた甲子園のマウンドで躍動した。

先発転向後、全4戦で炭谷とバッテリーを組んだが、この日のスタメンマスクは小林。初コンビでも姿勢はぶれさせず、6人並んだ左打者の内角を攻めまくった。人生初の甲子園での勝利に「ピンチになると360度から攻撃されている感じがしましたが、負けないようにと投げて、いい結果になりました」と喜んだ。

8年前には今の姿を想像もできなかった。兵庫・神戸市出身。甲子園は実家からは約1時間の距離にあるが「テレビで見る球場。高校時代は限りなく遠い場所でした」。北須磨高2年の時、甲子園で開催された審判講習会に手伝いで参加。ストライク、ボール判定の研修で“初登板”した。だがストライクを投げすぎてしまい「審判の練習にならない」とクレームを受けた。「めちゃめちゃ投げやすかったので。あえてボール球を投げました」。帰る際には「もう来ることはないだろう」と思い、手ではなくスパイクの歯についた土を袋に入れて持ち帰った。

立命大時代に1度登板したが敗戦。勝利には無縁だと思ったマウンドでヒーローになれた。球場に駆けつけた両親にも親孝行ができた。次回は中5日で15日ヤクルト戦(長野)で後半戦開幕投手を務める。「勝つということを意識して、このまま独走したいです」。力強い言葉が成長の証しだ。【桑原幹久】

▽巨人原監督(4勝目の桜井について)「非常に安定感があるしね、ストライクゾーンを広く使って投球できていた。バッターも非常に嫌がっている雰囲気がありましたね」