2028年ロサンゼルス五輪での野球・ソフトボール復活への1歩にしたい。第3回「フランス国際野球大会 吉田チャレンジ」が8月28日にフランス・パリ郊外で開幕する。

90年から7シーズン、仏ナショナルチーム監督を務めた吉田義男さん(86=元阪神監督)に敬意を表し、同氏の名を冠した大会として開催されてきた。今年は「侍ジャパン社会人代表」が派遣されることになった。10月アジア野球選手権(台湾)に向けたチーム強化の一環とし、フランス代表と対戦する。

14年第1回大会は、都市対抗初優勝の西濃運輸を含む4カ国が参加。五輪から除外されていた野球・ソフトボールの東京五輪での復活をうたった。16年はフランス、オランダ、ドイツ、米国が競い合った。その後、パリの国際情勢が緊張を示したことで延期されたが、今回は3年ぶりの開催にこぎつけた。

東京五輪で野球・ソフトボールは盛り上がるだろうが、24年パリ五輪では、再び国際舞台から姿を消す。28年ロサンゼルス大会で復活する保証はない。

欧州で低い普及度、参加人数の増大、非協力的な大リーグなど諸問題点が立ちふさがる。スポーツの多様化、野球人口の減少に拍車がかかって、将来が危ぶまれる。野球・ソフトボールのパリ開催に取り組んだ欧州野球連盟ディディエ・セミネ会長は「五輪からの除外はショックだが、必ずロサンゼルスで取り戻したい」と力説する。

一方で今年6月下旬、大リーグが英国ロンドンで公式戦(レッドソックス対ヤンキース)を組み、欧州初開催を実現させたのは大きかった。

東京五輪に向けた国際野球連盟の五輪復帰委員だった吉田さんは「社会人代表のフランス派遣を決めていただいた全日本野球協会、日本野球連盟には深く感謝したい。フランスは日本と対戦できることを大変喜んでいる」とし、その意義についても触れた。

「大リーグが欧州に興味を示したのは画期的なことです。野球・ソフトボールの五輪復活は当然のこと、世界の野球人が1つになって、野球を真のワールドスポーツに育て上げるべきです。とりあえずフランスとしては、日本に1つは勝ちたいですな」

毎年のように現地にわたって指導を続けるのは、野球人としてのあるべき姿だろう。大会期間中には“フランス野球の父”の功績をたたえた儀式も開催。未開の地に野球の種をまいた男、ムッシュ吉田は間もなく日本をたつ。【編集委員・寺尾博和】