下克上や! 阪神がDeNAとの接戦を制し、2勝1敗で5年ぶりのCSファイナルステージ進出を果たした。阪神藤川球児投手(39)が1点リードの8回から登板。今季2度目の「またぎ」となったが、DeNAの強力打線を1四球無安打無失点に抑え、最後を締めた。シーズン奇跡の6連勝フィニッシュに続き、驚異的な底力を発揮。9日から日本シリーズ進出をかけ、巨人と東京ドームで対戦する。

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どしゃ降りの雨に、マウンドはぬかるんでいた。それでも藤川は集中力を切らさない。勝利を信じたスタンドのファンを思った。「最後まで雨が降っていたけど、ずぶぬれになりながら、たくさんのファンが『今日で野球が終わってほしくない』と思っていたと思う」。9回2死一塁。打席に迎えたのは、6日にサヨナラ本塁打を放った乙坂。内角フォークで詰まらせると、打球は守護神の前に転がった。一塁へ送球。ゲームセットの歓声の中で、ぐっと力強く拳を握った。

悪天候でも鉄壁のリリーフ陣は崩れず、藤川にバトンをつないだ。1点リードの8回から登板。6月9日日本ハム戦(甲子園)以来、今季2度目の回またぎに燃えた。上位打線との対戦で、最もプレッシャーのかかる2イニング。矢野監督は1点を先制した時点で、勝負の局面で藤川に委ねることを決めていた。引き分けでもファイナルには進めない。矢野監督は「うちは同点でもダメなんで。球児には申し訳ないけど、行ききるというか。それぐらいの信頼がもちろん、間違いなくある」と強調した。8回を3者凡退に抑え、9回もロペスに四球を与えただけ。無安打無失点で攻めの起用に応えた。

指揮官との絆が藤川の原動力だ。シーズン中、リリーフ陣が打たれても、四球を出しても、矢野監督は何も言わなかった。簡単なことではない。藤川は言う。「とがめないというか、全くなかった。ピッチャーがマウンド上で、100%の力を出していい、ということになる。これはすごいこと」。初戦で打たれた島本も、2戦目で打たれた岩崎も、この日リベンジの場をもらい、懸命に腕を振った。全幅の信頼に意気を感じて、ブルペンからマウンドに上がる。

そして最後を藤川が締めた。「守るものがないのが強い。監督の采配を見ても、攻める気持ちで行けています」。絆が作ったリーグトップの安定感は、CSでも揺るがない。17年のCSファーストステージ第2戦。甲子園での一戦は、泥にまみれた乱打戦の末に敗れた。雨中の死闘を制し、DeNAにリベンジ。さあ、5年ぶりのファイナル進出。東京ドームのG倒で下克上の完結だ。【磯綾乃】