ソフトバンクが西武に連勝し、CSファイナルステージを2勝1敗と逆転した。3試合ぶり先発復帰で5番に起用された中村晃外野手(29)が、今シリーズで采配の光る工藤公康監督(56)の抜てきに応えて先制打、中押し2ランなど3打点の活躍で打線をけん引。先発全員安打で2試合連続8得点を挙げ、山賊打線に打ち勝った。

ソフトバンク打線がこの日も爆発した。第2戦の主役になったのは中村晃だ。まずは初回2死一、三塁。右前に強烈な適時打を放って1点を先制し「今日も先に先制点が取れて良かったです」。さらに3回無死二塁では初球打ちで右翼席に、今季CS1号の2ランをたたき込んだ。「初球からミスショットせずにしっかり仕留められました。柳田さんとデスパの良い流れに乗ることができて良かったです」。無死から柳田、デスパイネの連打で追加点を奪った直後の、効果的な1発だった。9番の高谷にも適時打が出るなど、4回までに7点を奪い主導権を握った。

CSで選手起用が光る工藤監督の采配が、この日もさえ渡った。中村晃は楽天とのファーストS第3戦からは先発を外れていたが「打線は少し変えました。打てる人を出します」とスタメン復帰させた。相手先発の今井から8月30日に2号ソロを放った実績を買いシーズン中に1度しかなかった5番に入れた。前日先発復帰させた松田宣も「5番」で結果を残したが変幻自在に切ったカードが面白いように次々と的中している。

「早出特打」も不思議な験担ぎのような役割になってきた。このファイナルSでは試合前に西武の室内練習場を借りて野手が打ち込んでいるが、打席数の少ない若手などが中心だったシーズン中とは打って変わって主力が参加している。前日の第1戦では松田宣と今宮が打ち込み、試合ではそれぞれ2安打。この日は松田宣とともに参加した中村晃のバットが火を噴いた。

中村晃にとって今季は悔しいシーズンになった。開幕前に自律神経失調症のために出遅れ、1軍復帰後も腰痛などで再離脱があり44試合の出場にとどまった。100試合を割るのは12年以来で7年ぶりのことだった。だからこそ、自分の結果は二の次だ。「個人成績はあまり関係ない。勝ちにつながる1本を打てればと思っている」と腹をくくる。クールな男が、ベンチで仲間とハイタッチをかわしながら笑った。もっと笑えるように。目標はまだ先にある。【山本大地】