少々気が早いが、来秋プロ野球ドラフト会議の“超隠し玉”候補が現れた。

中大法学部3年の杉浦健二郎投手(21=麻溝台)が3日、千葉・柏市のJR東日本グラウンドでのBCリーグトライアウトを受験。2日間の試験で150キロも投じた無名右腕は、それもそのはず高校、大学と野球部未所属。印象的なゴーグル姿とまさかの快速球で、視察したNPB出身の球団関係者たちをざわつかせた。

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受験番号701、謎のゴーグル男がトライアウトの主役になった。外野手用グラブをはめて打者4人と対戦し、無安打2奪三振。杉浦は「右手の中指に血豆ができちゃって」と話しながら、142キロを記録した速球は十分切れていた。

試験初日のブルペンでは150キロを投げ、関係者を驚かせた。「フォームも制球も何も考えず、1球だけ全力で投げたら」と笑う杉浦は、野球部員ではない。高校はバドミントン部。大学では自身で草野球チーム「相模台レイダース」を立ち上げ、週末に楽しむ。

中学は野球部にいた。悩みも多く、高校野球は断念した。「甲子園だけ出たかったな」と笑うが「そこへの過程を考えると…」と静かに添えた。野球部にはいなくても右手握力78キロに、バドミントンでの腕の振りが重なり、草野球では無双の存在に成長。軟式野球SWBCの日本代表チームに選ばれるまでになった。

ややインステップ気味から、しなやかに腕を振る。WEB動画から学んだ。「フォームの基本構成は千賀投手です。腕の振りは山本由伸投手、ひじの抜き方は安楽投手をマネして…。組み合わせて、少しそぎ落とした感じです」。カットボールやツーシームも、動画を参考にした独学だ。

球団関係者たちも素質に見とれており、来季はBCリーガーになる可能性が高い。NPBへは「入れたらな、くらいです」と笑うものの、格好の前例がある。昨年、浅い投手経験ながらトライアウトで合格したBC武蔵・松岡洸希投手(19=桶川西)が、今秋ドラフトで西武から3位指名。「率直に、すごい。自分もNPBを考えるなら1年で」とイメージしている。

夢破れても「復学すればいいだけですから」と割り切っている。科学的なウエートトレも未経験という原石が、プロの指導を受けたらどうなるのだろう。無限に広がる可能性。杉浦本人以上に、周りがぞくぞくしていた。【金子真仁】

<杉浦健二郎(すぎうら・けんじろう)>

◆生まれ 1998年(平10)4月10日。神奈川・相模原市出身。

◆投打 右投げ両打ち

◆所属 自身で創設した草野球チーム「相模台レイダース」

◆サイズ 身長182センチ、体重74キロ。「実は今、69キロに減ったんですけれど、なぜかその方が球が速くなりました」

◆高校時代 麻溝台高ではバドミントン部に所属。個人戦ダブルスで神奈川県大会出場

◆勉学 指定校推薦で中大法学部政治学科に入学。「原子力とメディアの関わり」について論文執筆中

◆ゴーグル 大学1年時の草野球試合中に自打球で眼窩(がんか)底を骨折。「そこからずっと着けるようになりました」

◆硬球 社会人クラブチームへの1日入部で初体験。「怖くはないですね」

◆幸運 今回のトライアウトは外野手希望。投手はサブでエントリー。「両方やらせてもらえて良かったです」。なお、打撃では良いところなし