侍ジャパンが「風神」で勝ちどきを上げる。11日に行われる「プレミア12」スーパーラウンド(SR)初戦のオーストラリア戦(ZOZOマリン)に向け、同球場で前日調整を行った。風が強い球場で知られるが、先発の山口俊投手(32)や第2先発候補の岸孝之投手(34)大野雄大投手(31)はボールを操るすべを知り、相性が非常にいい。

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どすこい右腕が風を切り裂く。初戦のベネズエラ戦から中5日で先発マウンドに上がる山口が入念に調整を重ねた。キャッチボール、遠投のあと、ひっそりとブルペンにこもっての微調整で仕上げた。「状態は悪くない。1点でも少なく、しっかりと後ろの投手につなげるようにやるだけです」と言った。

バックスクリーンからネット裏に吹き付ける風が跳ね返り、グラウンドレベルでは逆風に変わる。マウンドから正面に強風を受ける可能性があるが「基本的には直球を軸球にしたい。相手のバットをへし折るぐらいの気持ちでいく」。昭和の男と自認する右腕は、基本に立ち返り真っ向勝負の覚悟を示した。同時に「甘くいくと長打になりやすい。しっかりとコースに集める投球も大事になる」と球威に繊細さを融合させる。

風の魔術師は山口に続き、第2先発候補の岸と大野雄も君臨する。ZOZOマリンの防御率は山口が1・93、岸が2・30、大野雄が1・61。14年5月に同球場でノーヒットノーランを達成した岸は「もう5年前のことですよ。すごく得意とは思っていませんよ」としながらも「しっかりとコントロールできるか。中で待機することもあると思う。投げろと言われたところで投げる」と臨戦態勢を整える。

この日の練習時は風速2メートル。侍ジャパンの練習後にオーストラリア代表が練習を行ったが、微風にとどまった。試合当日に強風が吹き荒れれば、確実に相手は困惑するだろう。風を切り裂く山口の直球がズトンと刺さり、風をのみ込んだ岸のカーブがさく裂する。台湾から日本に場所を移してSR初戦。10年ぶりの主要国際大会制覇へ、侍ジャパンにとっては頼もしいフォローの風が吹く。【為田聡史】