“奇跡の男”が、始球式ならぬ投球を受ける“受球式”を熱望した。大相撲初場所で史上2度目の幕尻優勝を飾った徳勝龍(33=木瀬)が27日、都内の部屋で一夜明け会見に臨んだ。かつて野球少年だった徳勝龍は生粋の阪神ファン。捕手出身だけに、猛虎戦士の投球を受けてみたいといい、今季の注目選手にはドラフト2位の井上広大外野手(18=履正社)を挙げた。

異例の形で阪神との共演プランを思い描き、口にした。「始球式より(捕手として)球を受けてみたい」。幕尻で14勝1敗、史上最大の「下克上」を果たした男は、野球少年でもあった。父青木順次さん(73)と親子2代で阪神ファン。小学校2年から始めた野球は4番で捕手。母えみ子さん(57)によると「ホームランか三振か」という強打者だった。

プロ野球選手を目指す選択肢もあったが、徳勝龍は「走れなかったんですよ」。長打を打っても、二塁でストップ。将来を考えて相撲に絞ったが、角界入り後も特注のキャッチャーミットでキャッチボールを楽しむこともある。

子供のころ、大ファンだったのは、ヘッドスライディングなどの全力プレーで魅了した亀山努氏(50)だった。「ヘッドスライディングがね、かっこよかった」。一流投手の球を受けたい願望はあるものの「あまり速すぎるのは…」と苦笑い。「(現役選手の球は)速すぎて捕れないけど、今の亀山さんの球なら…」とも言い、笑わせた。

今季の注目選手を問われても即答だった。「試合に出られるか分からないですけど…ドラ2の井上選手です。あの打球はやばい。すごいです」。新戦力を分析した上で、期待をこめて井上の名を真っ先に挙げた。

“井上推し”は、履正社が優勝した昨夏の甲子園大会から決めていた。「1人だけ、すげー体してると思いました」。さらに徳勝龍には独自の視点がある。「(選手が)どのメーカーを使っているのか見てるんです。(使用メーカーが)いいんだなあ」。マニアックな視点からも、井上の活躍を確信して推す。

今季の予想にも言及し「やっぱり投手でしょうね」。やはり、捕手目線になる。「捕手って1人だけ違う向きで野球を見てるでしょう。いろいろ視点が違うんです」。その上で、阪神に対し「新しい選手の名前が出てこないですね。出てきてほしい」と願う。

旬な男として今後、多くの依頼も予想される。求められれば何でもやる。近大の先輩、糸井とも会ったことはないが、今後コラボの可能性もある。「史上最大の下克上」パワーを猛虎に注入する。