左足首の手術から再起を期す阪神糸井嘉男外野手(38)の20年初実戦が、23日の広島とのオープン戦(コザしんきんスタジアム)に決まった。

19日は沖縄・宜野座キャンプで初めてフルメニューを消化。ベースランニングもこなし、特打では4連発を含む柵越え18本で沸かすなど一気の全開モードだ。打順は1番の予定で、矢野監督が描く2番近本との超攻撃型オーダーの試金石となる一戦。阪神移籍後最速の2月実戦で、超人の20年が幕を開ける。

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昼下がりの宜野座。肌寒い風の吹く中、糸井が実感を込めて言った。「とりあえず出れるっていうところまできた。メスまで入れたので…。そこが1番ずっと気にしているところ。出れるっていうのが一番。そこまできた」。

昨年8月9日の広島戦(京セラ)で左足首を負傷し、10月に手術。慎重に調整を続け、この日初めて全体練習にフル参加できるまでになった。ベースランニングなど全力疾走やスライディングも披露。20年初出場予定の23日広島戦へ、超人が全開デモを敢行した。

1番での出陣が有力だ。矢野監督は「(1番は)もちろん、もちろん。1番に入ったら相手も嫌だろうしね。オープン戦をやっていく中で決めていくけど、その一つとしてヨシオの1番はあると思う」と説明。井上打撃コーチも「こういうオーダーもあり得るというのはどんどん試す」と明かした。矢野監督が2番構想を抱く近本は実戦で結果を出し続けており、今季を占う超攻撃型オーダーの試金石となりそうだ。

1番は糸井にとって相性のいい打順だ。昨年は1試合にとどまったが、17年は25試合で打率3割5分。出塁率は4割2分5厘をマークしている。一方の近本は今季実戦6試合に2番で出場し、打率4割1分2厘&8打点。本塁打も2本放つなど“恐怖の2番”としてパンチ力も光る。プレーボール直後に糸井と近本が並び、中軸につながる打線が組めれば、相手の脅威になるのは間違いない。

外野守備に就く。清水ヘッドコーチは「(守備に)ついてもらう方向で考えている。シートノックも2日続けている。休みも含めて状態を確かめて」と説明。糸井はこの日のシートノックで6度の守備機会を危なげなくこなし、本塁へもストライク送球も見せた。また、ランチ特打では69スイングで4連発を含む18本の柵越えを放つなど怪力も健在。見ていたファンも「糸井さんやばいな…」と、あぜんとする弾丸弾を見せつけた。特打終了後も室内でマシンを相手に160スイング。阪神移籍後最速となる2月実戦へもう全開だ。

「試合に出られる。それがうれしい」。野球に飢えた38歳の20年が、ようやくスタートする。【只松憲】

▼阪神移籍後の糸井は、1番で先発出場した26試合で打率3割4分6厘。打順別では最高の成績を残している(1試合だけの2番を除く)。ちょうど半数の13試合でマルチ安打を記録し、ノーヒットはわずか5試合と、安定して力を発揮している。日本ハム、オリックス時代の1番での通算2割8分6厘を、大幅に上回っている。

<糸井の歩み>

◆盗塁で負傷 8月9日広島戦で、二盗を試みてスライディングした際に左足を痛めて退場。10日に出場選手登録を抹消された。

◆シーズン絶望 9月1日、年内の復帰は絶望的であることが判明。左足首付近の腱(けん)の損傷が発覚したと自ら明かした。

◆手術 東京都内の病院で「左足首の関節鏡視下クリーニング術及び靱帯(じんたい)補強術」を受け、10月9日に退院した。

◆故郷で健在アピール 11月10日、京都・宮津市内で野球教室に参加。負傷後初めて公の場でジョギングし、ロングティー打撃の実演指導行った。

◆現状維持 12月11日、4年契約契約最終年、現状維持の4億円プラス出来高で更改。「うっぷんを晴らしたい。いろんなモノを…ジャッカルしたいっす!」と発言。ラグビーW杯で日本代表FW姫野和樹が得意としたプレーになぞらえた。

◆順調キャンプ 2月7日に本格的にベースランニングを開始。9日はランチ特打で柵越え4本を放った後、中堅で打球捕を行った。

▽阪神筒井壮内野守備走塁コーチ(糸井について)「動きは非常にいい。いいボールも投げていた。流れの中でできたら問題ない」