昨季限りで阪神を退団した鳥谷敬内野手(38)が、ロッテと入団交渉を行い、合意したことが9日、分かった。10日に発表される。鳥谷は昨季、阪神から“引退勧告”を受けたが、現役続行を選択して他球団移籍の道を模索。一方ロッテは数カ月間に渡って獲得調査を続け、経験豊富な遊撃手がいないチーム状況も踏まえ、虎のレジェンドの力が必要と判断。3月上旬という異例のタイミングで獲得を決めた。

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鳥谷の新天地がついに決まった。水面下で獲得調査を続けていたロッテがこの日までに獲得オファーを出し、入団交渉が合意に達した。10日に発表される。一般的なチーム編成のタイミングは過ぎ去り、2月のキャンプ期間も終了。3月も中旬に差し掛かろうかという異例のタイミングで、スタープレーヤーの現役続行が決まった。

ロッテは当初から鳥谷の動向をチェックする複数球団の1つとして注目されてきた。井口監督と鳥谷が長年1月沖縄自主トレを共にしていた縁もあり、昨年10月中旬には指揮官が実際に「これからそういう(鳥谷の)話も出てくると思う」と公言したこともあった。一方で、球団はすでに名球会入りしているレジェンドが若返りを進めるチームにフィットするかどうか、慎重に調査を続けてきた。

遊撃候補を見れば、レギュラー筆頭候補の藤岡は昨季、右太もも痛など故障に泣き81試合出場どまり。平沢は昨季痛めた右肘が完治しないまま2軍キャンプスタート。昨季89試合出場のユーティリティー三木も昨年10月に右膝を手術し、まだ2軍調整中だ。ドラフト5位福田光が2月から実戦でアピールを続けているとはいえ、選手層に不安が残る。そこで鉄人としても知られるベテランに白羽の矢が立った。

鳥谷は阪神退団後のオフも「まだ終われない」と現役続行に強い意欲を示し、例年通りハードなトレーニングを継続。1月はハワイで体をいじめ抜き、無所属のまま迎えた2月のキャンプ期間中も鳥取市内のトレーニング施設「ワールドウィング」などで地道に体を鍛え続けていた。ロッテは戦力としてはもちろん、球界屈指の練習量を誇る姿勢も若手に好影響を与えると判断した可能性が高い。

年俸は1軍最低保証の1600万円クラスとみられる。ポジションや1軍の確約は一切ない。ライバルとの勝負に勝てばプレーできるが、敗れれば2軍生活が続く可能性もある。シンプルな構図は望むところだ。「もう1度、勝負したい。それだけ」。覚悟を決めていた鳥谷に、新たな舞台が用意される。

◆鳥谷敬(とりたに・たかし)1981年(昭56)6月26日生まれ、東京都出身。聖望学園で3年夏に甲子園出場。早大に進学し、2年春に東京6大学史上最速タイで3冠王に輝くなど活躍。03年ドラフト自由枠で阪神入団。2年目の05年に遊撃の定位置を獲得し、1939試合連続出場はプロ野球2位、全イニング連続試合出場667は同5位。17年9月に通算2000安打を達成。180センチ、79キロ。右投げ左打ち。

◆3月以降に復帰した主な選手 11年中村紀洋は前年に楽天を戦力外となり無所属のまま開幕。独立リーグから獲得の申し出はあったが、NPBからのオファーにこだわり、5月24日に横浜と契約した。18年上原浩治はカブスからFAとなったが、メジャー球団との契約に至らず。メジャー以外は引退する決意だったが、3月9日に巨人と契約し、10年ぶりの古巣復帰となった。