開幕の球音が3月20日に聞かれることはなくなった。新型コロナウイルス対策連絡会議で専門家から延期を提言され、受け入れるしかなかった。11年の東日本大震災以来となる緊急事態。斉藤コミッショナーは「今回はそれ(オープン戦無観客)以上に大変苦しい判断であった。選手はもとより、スタッフや家族を守り、何よりもファンの方々のご理解、同時にプロ野球の文化も守らなければならない。そのための決断であることをご理解いただきたい」と苦渋の決定を語った。

開幕を現状、通常開催できない理由は2点だった。専門家の三鴨氏は「基本再生産数が一定のレベル以下になる。もう1つは各球団の準備状況。教育、啓発、物品準備、それも含めた2つがキーになる」と説明。基本再生産数は1人の感染患者が罹患(りかん)中に何人の未感染者に伝染させるかの目安。この数値が高い数字を示し、拡大傾向が続いているという。さらに球場が開催にあたり、数万人の来場者の検温を行い、37度5分以上なら入場を規制し、大量の消毒液も準備する必要性が指摘された。残り約10日間での準備は極めて困難と判断された。

緊急で日程を再編する。斉藤コミッショナーは「4月中に開幕できることを一応、目指している」と話した。ペナントの143試合制の維持は12球団の指針。その中でNPBが複数の新開幕日程案を提示している。3週間後の4月10日を軸にリスタートを探るとみられる。

オープン戦は無観客で行っているが、シーズンでの敢行は球団経営への影響も大きく、斉藤コミッショナーは「個人的な感覚だが、最後の最後の選択、ほとんどありえないに近い」と否定的。12日の第3回の対策連絡会議で専門家からの最終的な答申書を受け、再度の代表者会議で日程再編について再協議する。終わりの見えないウイルスとの闘いの中、難しいかじ取りを迫られる。【広重竜太郎】