また1人、楽しみな新人が現れた。阪神育成ドラフト1位の小野寺暖外野手(21=大商大)が、弾丸安打で1軍デビューを決めた。

ボーアや福留、糸井ら主力が調整で欠場する中、オリックス戦に緊急招集。9番右翼で出場すると、5回表の第2打席で魅せた。田嶋の136キロ直球を捉えて左翼線へ二塁打。「自分のバッティングを見せることができた」。二塁ベースから三塁ベンチへ、会心のガッツポーズを突き出した。

オープン戦のデビュー戦で安打を打った阪神育成新人は史上初。関西6大学リーグでMVPを2度受賞した力強いスイングで猛虎史に名を刻んだ。大山の適時打で生還し、1軍初得点も記録した期待の星を矢野監督も絶賛だ。「おもしろい。登録名を『暖』にしたらいいのにな。暖っていい名前やんな、字もいいし。肩とかもいいし、見てみたい。興味の湧く姿を見せてくれているんで、楽しみ」。

同期からの激励も闘志を熱くした。この日の朝、出発前にドラフト1位西純矢投手(18=創志学園)ら同期に「頑張ってきてください」と声をかけられた。だが、8日に1軍初安打&初打点を記録した同2位の井上広大外野手(18=履正社)からは「ファイト!」とため口で激励された。先に活躍した4学年下の後輩からのエールに、燃えた。

春季キャンプでは和田TA指導のもと、下半身を使った打撃で柵越えを量産した。5日の母校大商大とのプロアマ交流戦(鳴尾浜)では、矢野監督の視察する前でバックスクリーンへ特大弾。この日の1軍合流を引き寄せ、そのアピールチャンスを見事生かした。

試合前には球団のインスタグラムのライブ配信で、指揮官と井上打撃コーチからジャージーにシワが入っていることをいじられた。「くしゃくしゃに入れてたやろ。そういうところや」。そんな喝も入ったが、1日も早い支配下登録を目指す男が、結果で返した。

3回の第1打席は強烈な打球が三失を誘い、けん制で挟まれながら三塁走者との重盗でラッキーな初盗塁を記録。1軍合流は開幕延期を踏まえ、先日の井上らと同様の“お試し”だったが持ってる男ぶりも発揮した。シンデレラボーイ、誕生の予感だ。【只松憲】

◆小野寺暖(おのでら・だん)1998年(平10)3月17日生まれ、奈良市出身。左京小2年から奈良リトルで野球を始め、平城東中では南都ボーイズに所属。京都翔英で高校通算20本塁打も甲子園出場はなし。大商大では3年春に18打点を挙げ、4年春は打率5割の首位打者で、いずれもMVP。リーグ戦通算5本塁打。183センチ、82キロ。右投げ右打ち。背番号127。今季推定年俸300万円。