熱いシーズンはまだ見られないけど、ドラマチックな場面を今年も見たい。そこで、これまで球史に残るワンシーンを生み出してきた「代打の切り札」を深掘りした。

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中日で監督を務めた谷繁元信氏(49=日刊スポーツ評論家)が、ベンチの視点から代打について語る。

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代打のイメージとして、長年レギュラーを張ってきた選手が最後に輝く仕事場のイメージがあるだろう。自分が監督の時は小笠原(現日本ハムヘッド兼打撃コーチ)がそう。現役の時なら立浪さんが浮かぶ。技術だけでなく、配球を読んで仕留める勝負師の要素も備えていないと、安定して結果を出せない。投手の左右に関係なく送り、勝負をかける「切り札」を持っていることは、非常に大きい。

ただ近年、特にセ・リーグは代打の切り札を備えにくくなっている。投手の分業制が細分化し、先発が完投に近いイニングまで投げ抜く試合が少なくなった。ゲーム展開は複雑になり、代打を切るタイミングが1試合で複数回、訪れるケースが多い。打って守れる選手を2から3枚、備えておいた方が試合運びに弾力性が出る。

中盤に代打を送り、そのまま守備に入る。再び打席が回ってきたときに、相手はどんな投手が投げているのか。展開を読みながら送る順番を決める。経験を積ませる意味合いも含め、若い選手を複数、ベンチに置くケースが増えている。

そんな中で今後、いわゆる切り札として代打を極める可能性を秘めている選手がいる。ソフトバンクの内川だ。右打ちだが先の条件をすべて備えており、打ち取ることが実に難しい好打者。試合を決める職人として輝きを放つ能力がある。