願いはひとつ。広島会沢翼捕手が13日、32歳の誕生日を迎えた。例年と違い、新型コロナウイルスの感染者拡大を受け、試合のない誕生日になった。マツダスタジアムで行われている分離練習の午後組で、鈴木誠や長野らと黙々と調整。先行きが見えない中で迎えた記念日に望むことは、収束した先に待つ開幕だった。

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32回目の記念日に、会沢は複雑な表情を浮かべた。祝う年齢でもなくなっただけではない。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響でシーズン開幕が遅れ、日本中が不安を抱えている。どんな誕生日プレゼントよりも、収束に向かうことを何より望んでいる。

会沢 早く野球がしたいですね。初めて経験することですが、この経験が糧になってくれれば。ただ、なるべくこういう経験はしたくないですね。

プレーできない環境で迎える誕生日は、左肩を手術したプロ2年目の08年以来、1軍に定着してからは初めて味わう。だが、状況は当時とは大きく異なる。シーズンが始まっていないどころか、開幕日も不透明。ゴールの見えない調整が続く。

会沢 僕だけがストレスを感じているわけじゃない。子どもも奥さんも感じている。僕がピリピリしたら家族も気をつかってしまう。

家では気持ちを切り替え、リラックスモード。家族との時間が増えたことをプラスにとらえる。

プロ14年目。2年目に負った左肩の亜脱臼だけでなく、右太ももの故障になど見舞われてきただけに、年齢を重ねて体に対する意識も変わった。練習や試合の前後には、入念なストレッチを欠かさない。ひた向きに取り組んできたからこそ、広島の正捕手であり侍ジャパンの正捕手候補となった今がある。「できるだけ(現役を)長くやりたい。尊敬しかない」と、今年41歳を迎える先輩石原の背中を追う。

3月末には「自粛ムードがある中で、練習をやっていいのかなという葛藤もある」と吐露していた。今も状況は変わらないが、チームメートと一緒に汗を流す時間帯では笑顔も多い。「明るくやっていきたい」。下を向かず、前向きに。バースデーに、1日も早い“快幕”を願った。【前原淳】