ソフトバンク・ドラフト5位の柳町達(たつる)外野手(23=慶大)が、“プロ初アーチ”で開幕1軍生き残りをアピールした。

紅組の「10番右翼」で先発。6回2死一、二塁でメジャー通算54勝左腕、新助っ人マット・ムーア投手から逆方向となる左翼テラス席へ放り込んだ。激しい外野争いにも野手で1人残ったルーキーが、2日のオリックス戦から再開される練習試合でも暴れる。

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痛快なアピール弾だった。柳町が、メジャーで54勝を挙げた左腕ムーアの147キロの直球を捉えて逆方向の左へ運んだ。「1年目から1軍で使ってもらっている。開幕も決まり、自分もそれに向かってしっかりアピールしないといけませんから」。快音を残した打球が左翼ホームランテラス席に入ると、チーム内から歓声が上がったほど強烈な打撃だった。ホームイン後、恥ずかしげに「エアハイタッチ」をするしぐさはルーキーらしく初々しかった。

外野手として、ドラフト1位佐藤直樹外野手とともに春季キャンプから1軍でアピールしてきた。オープン戦までは、佐藤の方が俊足とチャンスに強い打撃でアピールに成功。どちらかと言えば、柳町は追いかける立場だった。現在、その佐藤は右肘を痛めてリハビリ組で調整中。「寮で会うときは1軍の様子とかを伝えている。どんどんアピールして(新人の)みんなの希望になれるようになりたい」と仲間の分まで気合を入れている。

レベルの高いソフトバンクの外野陣で生き残るのは容易ではない。「ここまでいろいろ試してきたことが、結果につながっている」。自粛期間に実戦練習のビデオをチェックし「速球対策が課題だと思っていた」と自覚し、自主練習では「タイミングの取り方とかを重点的にした」。取り組みが紅白戦ラストゲームでの「プロ1号」3ランにつながり、白い歯を見せた。

工藤監督も「ビックリしたね。逆方向へいい打撃だった。長打が出たのは自信になる」と目尻を下げた。この2カ月で体重も2キロ増えてパワーアップ。紅白戦は10打数3安打1本塁打だった。2日からスタートする他チームとの練習試合から、さらなるアピールを続ける。【浦田由紀夫】

◆ソフトバンクの外野陣 非常にレベルの高い競争となっている。現状の開幕オーダーは左翼バレンティン、中堅柳田、右翼上林が予想される。ベテラン長谷川、柳町と続くが、捕手が本職で打撃好調の栗原に加え、最近の紅白戦ではベテラン川島、西田も外野を守っている。また牧原、周東も外野を守れ、工藤監督の「複数ポジション方針」によって、特に外野のポジション争いが激。柳町はルーキーながらここに加わっている。俊足好打、そしてこの日のような1発長打も武器で、春季キャンプから1軍同行でしがみついてきた。開幕1軍に入るには自慢の打撃力でアピールし続けるしかない。

◆柳町達(やなぎまち・たつる)1997年(平9)4月20日、茨城県生まれ。中学時代は取手シニアでプレー。慶応(神奈川)では甲子園出場なし。慶大では1年時から活躍し、リーグ戦通算113安打を記録。19年ドラフト5位でソフトバンク入り。今季推定年俸760万円。180センチ、75キロ。右投げ左打ち