元阪神のクレイグ・ブラゼル氏(40)が、悩める後輩ジャスティン・ボーア内野手(32)にエールを送った。

ボーアは巨人との開幕3連戦で12打数無安打。3戦目で4番から外れたが、10年に47本塁打をマークした左打ち大砲の先輩は「自分を信じよう」「先人に聞こう」「浜風と仲良くしよう」と成功3カ条を伝授した。

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10年ほど前、似たような期待値に重圧を感じていたのだろう。ブラゼル氏は心の底から後輩ボーアの胸中を案じていた。「バースを超える外国人選手は絶対に出てこないと思う。比較するのは非常にかわいそう」。左の大砲助っ人。レジェンドと比べられる宿命を背負った過去があるから、自然と言葉に力がこもった。

米国在住。古巣阪神の情報はツイッターやニュースで仕入れる程度だという。それでも宿敵巨人との開幕3連戦でボーアが苦しんだ事実は把握していた。「まだ始まったばかり。技術的にも、もう少し時間を与えてあげた方がいいんじゃないか」。先輩はそうフォローした上で、成功するための3カ条を後輩に託した。

<1>自分を信じよう 「阪神は非常に多くのメディアがフォローしていて、いろんな人がいろんなことを言ってくる。自分を信じて自分に必要な調整をやってほしい。外部の意見に振り回されないことが大事」。

<2>先人に聞こう 当時巨人の主砲だったDeNAラミレス監督からは「自分で感じて自分で学ぶことが大事」と教えられた。「ラミレスさんとか(元ロッテ監督)バレンタインさんなど、経験者からのアドバイスにはすごく助けられた」。

<3>浜風と仲良くしよう 虎の左打者は右翼から左翼に吹く甲子園の浜風に苦しめられがち。ブラゼル氏は風の特性を逆手に取り、10年に47本塁打、117打点を記録。「(打撃コーチだった)和田さん、片岡さんからレフトを目がけて打とうと教えてもらい、風に乗せてホームランを打った。風をうまく利用したよ」。

縦じまに別れを告げて8年。古巣を愛する気持ちは今も変わらない。日本プロ野球外国人OB選手会が開催した21日のオンライン交流会でも、虎の15年ぶりVを期待したブラゼル氏。後輩ボーアの成功も切に願っている。【佐井陽介】

◆クレイグ・ブラゼル 1980年5月10日生まれ、米国アラバマ州出身。98年ドラフト5巡目でメッツと契約。メジャー通算29試合で10安打、1本塁打、3打点、打率2割6分3厘。08年西武のあと米独立リーグを経て、09年途中阪神入り。日本では牛丼をこよなく愛した庶民派。現役時代は191センチ、95キロ。右投げ左打ち。

◆阪神時代のブラゼル 09年開幕から在籍したメンチの不振を受け、5月下旬に阪神と契約した。デビュー戦となった6月5日オリックス戦3打席目に、甲子園の左翼へ1号。同年の16本塁打は阪神にシーズン途中入団した外国人では初の2桁本塁打となった。10年には金本、新井、城島らと強力打線を形成。この年の47本塁打は、甲子園ラッキーゾーン撤去の92年以降チーム最多。中堅から左方向へのアーチが多いことも特徴だった。阪神在籍91本塁打は、外国人中5位((1)バース202(2)カークランド126(3)アリアス95(4)ラインバック94)と、球団史に残る強打の助っ人だった。