<阪神3-2DeNA>◇10日◇甲子園

球場にファンが帰ってきた! プロ野球が10日から人数を制限しての有観客試合を開始。約4万7000人収容の甲子園では、入場の上限となる5000人のチケットが完売。空席が目立つ寂しさもあったが、ソーシャルディスタンスを保って試合が行われた。虎番の奥田隼人記者がファンとしてスタンドに潜入し、新スタイルの観戦を体験した。

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スタンドはガラガラ…という訳ではない。新型コロナウイルス対策で約4万7000人収容の甲子園では、上限が5000人。全体数に対して約9分の1というファンの配置だった。少し寂しい感じもあったが、その分、応援の音もよく響いたように思う。

土砂降りの甲子園。審判が降雨コールドゲームを宣告すと、この試合で一番!? の拍手、歓声が巻き起こった。選手たちはベンチを出て、雨にぬれながら客席にあいさつ。ファンの前での“初勝利”を報告した。本来なら、歌唱ではなく鑑賞を推奨した上で勝利の六甲おろしが流れるはず…だった。しかし、降雨コールドとイレギュラーな終わり方のため、お預け。球場職員は「本来なら流れるんですけどね…」と説明していた。

午後4時に開門。待ちに待ったファンが次々とゲートをくぐった。サーモグラフィーによる検温も立ち止まることなく、スムーズに入場することができた。一塁ベンチ後方、前から20段目あたりに着席。座席は1列約10席のところに5席間隔を空け、2人が着席した。前後の列に人が座ることはなく、ゆとりを持って観戦することができた。

小雨がぱらつく中、プレーボール。いきなり先発青柳が梶谷に先頭打者アーチを浴びた。ビジターのDeNAが攻撃する際は応援歌は流れず、静寂がグラウンドを包む。「あ~」という虎党の悲鳴もよく響いた。打球音や選手同士の掛け声も、よく聞こえた。

阪神の攻撃は、応援団が収録した応援歌が流れる。ファンは音に合わせて手やメガホンをたたいて応援。大声を張り上げての応援は禁止となっているのだが、勝負どころではついつい力の入った声援も聞こえた。「近本~!」「大山~!」。従来のスタイルよりファンの数も声援も制限されている。リズムを刻む音も気合の入ってしまった声援も、より響く印象だった。

腹ごしらえには名物甲子園カレー。現金の受け渡しは感染対策でトレーを介した。マスク、手袋姿の売り子さんからは、レモン酎ハイを1杯。対応前には消毒を徹底していた。声の代わりに手を挙げての呼び込みなので、見つけてもらうまでに大きなアピールが必要だった。

雨脚が強まる5回表の攻撃。ぬかるむマウンドに青柳が土を入れてもらうよう要求すると「阪神園芸がんばれ~!」「青柳がんばれ~!」と声が飛んだ。DeNAソトが自打球を当ててベンチからトレーナー出てきた際には「はよ、せんかい!」と、試合進行をせかすヤジも。無事に5回を抑えると、ひときわ大きな拍手がナインに送られた。

5000枚のチケットは完売し、実際に4945人が来場した。ソーシャルディスタンスを保った中での有観客試合。早く超満員のスタンドを見たい気もするが、今は「with コロナ」で最大限に楽しみたいと思う。選手はファンの応援からパワーをもらい、ファンはまた、選手のプレーからパワーをもらう。両者がそろって初めて「プロ野球が帰ってきた」と、実感した1日だった。

◆甲子園 5000人をアルプス席以外の内外野席に配分。全席を指定席とし、9席に1人の割合。年間予約席契約者および公式ファンクラブ会員への先行発売後、一般発売を行う。球場店舗は一部で営業。売り子らはマスク、手袋を着用。声を出しての呼び込みの代わりに挙手で対応。商品受け渡し時は消毒を徹底し、キャッシュレス決済も可。アルコールの販売は6回終了をメドに販売終了の予定。7回攻撃前の「ラッキー7」では、ジェット風船の使用は禁止。ジェット風船がデザインされたタオルを掲げるスタイルを推奨する。