シャイボーイが4929人の前で胸を張った。ロッテ種市篤暉投手(21)が6回3失点、130球の熱投で待望の今季初勝利を挙げた。「厳しいピッチングでしたけど、何とか粘れて良かったです!」。“満員”のスタンドから惜しみない拍手が送られた。

秒速10メートル超の浜風を味方につけた。前回ZOZOマリンで投げた6月27日オリックス戦では、3者連続三振をすべてフォークで奪った。一転して直球攻め。序盤、速球がシュート回転したのを逆手に取った。「風のおかげで真っすぐが伸びた。左打者の外角は気持ち、中に入れるイメージで投げてました」。10三振中、8個を直球で積み上げた。

ようやく援護に恵まれた。前週まで3戦0勝1敗。登板時の味方の得点はいずれも1点で、白星が付かなかった。2点リードの9回は「そわそわ」した。そんな空気も楽しんだ。鳴り物応援がなく、最後の打者・西武山川の打席で手拍子が響いた。ベンチでハーマンと「メジャーみたい」と話しながら見守った。

種市は選手名鑑の「苦手なもの」欄に「ヒーローインタビュー」と書いている。入団2年目までは話す時も小声でぼそぼそ。きれいな青森イントネーションだった。それが今季初の有観客お立ち台を引き当て、堂々とマイクを握り、「三振を2ケタに乗せたかった」と言って笑顔になった。

チームの連敗を2で止め、0・5ゲーム差だった西武から2位を死守した。まだ人の目を見て話すのはそんなに得意じゃない。どこか初々しい雰囲気も残している。だが井口監督に「うちのエース格」と言わしめた背番号16は、少しずつ、頼れる種市先輩に進化している。【鎌田良美】