西武辻発彦監督(61)が“鬼采配”で2位ロッテから勝ち越しをつかみ取った。

先発与座海人投手が、3点リードのプロ初勝利目前の5回2死走者なしから四球と適時二塁打で1点を返されると交代の決断を下した。試合前練習では、声を掛けたコーリー・スパンジェンバーグ外野手が3号2ランを含む2安打の活躍。勝つためのタネを随所にまきながら、ロッテに0・5ゲーム差に詰め寄った。次カードの敵地での首位楽天6連戦に勢いをつけた。

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心を鬼にして、交代を命じた。先発与座が5回2死から四球を与え、4番レアードに右越え適時二塁打を浴びた直後だった。あと1人。点差はまだ2点ある。プロ初勝利のかかった右腕を降ろし中継ぎの大黒柱・平井克典投手を送った。「あそこのフォアボール。あそこが限界かなと。本当に、5回の頭から代えたいぐらい今日は落とせない試合だったからね」。平井、平良海馬投手、リード・ギャレット投手、増田達至投手とつなぐ盤石継投で勝利をもぎ取った。

親心で5回のマウンドへ送りだした。先頭から始まる3まわり目。「やっぱり与座に勝ち星をつけてあげたいというところで、5回もいったけど、(アウトを)2つまでとって、もう1つ、あのフォアボール、それからレアード…。ちょっと残念だった」。実際に与座は登板4試合のうち3巡目の失点が3試合。チームが勝利を挙げるための決断だった。

勝利のタネもまいていた。試合前練習では、直近4試合で9三振のスパンジェンバーグに身ぶり手ぶりを交えて指導。すると、2ラン含む2安打を放ち「スイングが強いバッターなんで。打てる球を打てばいいわけだからね。まだまだ慣れてないとこもある。まあ徐々に慣れてくれば、もっともっと打つと思いますよ」。3連覇のキーマンともいえる助っ人に好球必打のヒントを与えながら、腰を据えて開眼をじっくりと待っている。

次カードは2ゲーム差で追う首位楽天との仙台6連戦。2位ロッテに勝ち越しても、ぬか喜びは一切ない。「いい形もなにも普通ですよ。普通だけど、大きく負け越さないように。(勝率)5割、5割、それでずっとしつこく粘っていけたらいいかなと思います」。短縮シーズンの6分の1、20試合を消化して、10勝9敗1分け。誰よりも地に足つけて、采配を振るだけだ。【栗田成芳】

▽西武スパンジェンバーグ(6回、3号2ラン) ストライクが入っていない状況だったので、甘い球を待っていた。それをしっかり仕留める意識できっちり打つことができた。