前評判を、みんなで覆す! ヤクルトが巨人との首位攻防戦を3-2で制し、今季初の4連勝で初の首位に立った。高津臣吾監督(51)が指揮をとって19試合目。先発高梨裕稔投手(29)が今シーズン初勝利を挙げ、打線は少ないチャンスで4番村上宗隆内野手(20)が適時打を放ち、投打がかみあった。昨季最下位から、燕が下克上を狙う。

   ◇   ◇   ◇

ゆっくりと、マスク姿の高津監督がベンチから出てきた。就任後初めて、三塁線近くまで歩を進め佐藤球審に声をかけた。「これは、リクエストできますか?」。勝負どころと読んだ。6回1死一、三塁で巨人炭谷の併殺崩れの間に三走が生還し同点に。この際の二塁封殺の判定を巡り、リプレー検証を要求した。結果、判定は覆って打者走者もアウト。得点も取り消された。「同点にされるか、チェンジになるか、すごく大きな1プレーだった。よかった」。選手とともに勝利をつかんだ。

キャンプイン前、選手に強いメッセージを打ち出した。「去年の悔しさ、悲しさ、むなしさを忘れずに、エネルギーにして戦おう」。過去は変えられないが、糧にできる。指揮官の根性と選手の意地が重なり合い、“反骨心”になる。5回、先頭で高梨が右前打で出塁。2死一、二塁からの村上の右前打で、二塁から一気にホームを駆け抜けた。この激走が結果的に貴重な追加点をもたらした。「1つでも前へ、1つでも上へ」という戦う意思の表れ。この日だけではない。開幕からナインは体現してきた。打線では山崎、西浦ら伏兵が躍動。チーム盗塁数16はリーグトップ。監督自らサインを出し、エンドランなどを積極的に仕掛ける。

親心が選手の闘志を育てる。練習中には山田哲ら中堅だけでなく、梅野、寺島ら若手にも積極的に声を掛ける。昨年まで3年間、2軍監督を務めており、目には優しさも込められている。「選手は息子たちと同世代。長男は梅野、寺島、次男は奥川と同じ学年。ファームでずっと見ている選手は、なんとかしてやりたいと思う」。

開幕時に想定していた勝ちパターンの長谷川、梅野は不調な時期もあったが、粘り強く使い続けた。この日も1点差の6回から長谷川-梅野-清水-石山とつなぎ、無失点リレー。開幕前には多くの解説者から最下位予想に挙げられたが、前評判は関係ない。初の首位。「一番上の気分は、悪くないですね」。この景色は、譲らない。【保坂恭子】