4000人のファンが固唾(かたず)をのんで、マウンドを見つめていた。オリックス山本由伸投手(21)が1人の走者も許さない。日本ハムの主軸から次々と三振を奪った。「お客さんの前で野球をするのが久々だったので、少し緊張したんですけど、1球1球温かい拍手を頂いて、本当にいいパフォーマンスができた」。

有観客試合に力がこもった。6回1死まで完全投球。被安打3の1失点で迎えた8回終了後、ベンチで西村監督と話し込んだ。「体の状態と、自分のボールだったり、監督の考えだったり。いろんな意見交換をして『いける』という結論だったので、9回のマウンドに行きました」。1点のリードを守りきり、リーグ完投一番乗り。積み重ねた13奪三振は自身プロ最多だった。

背中を押す「音」があった。この日、登場曲をSNSで話題となっている三阪咲の「We are on your side」に変更して臨んだ。19年度の全国高校サッカー選手権の応援歌で「YouTubeを見ていたら、その歌が流れてきた。前の歌もすごく好きで、迷ったんですけど…変えてみようかなって」。初回と9回のマウンドで流れ、力に変えた。

昨季は最優秀防御率のタイトルを獲得したが、8勝止まり。「今年は全部勝つつもりで僕は投げている」とたくましい。リーグトップタイとなる3勝目。4年目右腕がエース級の投球を見せている。チームは3連勝で今季初めて最下位から脱出。最大8あった借金も3とし、5割復帰も見えてきた。「サンデー由伸」が上位進出に導く。【真柴健】

◆オリックス山本、ソフトバンク石川の共通項 120キロ台の高速カーブを織り交ぜて相手をずらしながら、持ち球すべてをカウント球、勝負球にフル活用した。「しつこさ」も共通点で、山本は7回、清宮に対しアウトローにフォークを3球並べて3球三振。石川は4回、ブラッシュに対して真ん中~高めにパワーカーブを4球集めておいて、最後は高めに直球をズドン。相手の反応を洞察し、嫌がるボールを続けたオリックス若月、ソフトバンク甲斐のリードもさえ渡った。