この日ばかりは、完敗にも乾杯だ。広島が今季本拠地初の有観客試合を勝利で飾れず、連勝も2で止まった。マツダスタジアムには4987人のファンが集まった。広島は投手を中心に守り勝つ野球を展開できず、終盤に2点を返すのが精いっぱい。それでもファンは1つ1つのプレーに一喜一憂した。ボールパークに日常が帰ってきた。次戦こそ、ファンと笑顔で喜び合いたい。

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限られたチケットを手にした思いからか、終盤まで席を立つファンは少なかった。広島の本拠地有観客試合初戦は完敗。中盤6回を終え、1-7。5点差となった9回にフランスアがボール球を連発しても、拍手が湧いた。投打ともに完敗ムードにも、広島ナインの真剣勝負に最後まで温かい拍手を送られた。

ファンがいる、当たり前の光景が帰ってきた。鳴り物は禁止。応援旗や横断幕もない。1プレーに拍手が起こり、ため息が漏れる…。ファンは何とか広島ナインに力を送ろうと、1人1人の手拍子がときに大きな音となった。マウンドで九里が3ボールとカウントを悪くしたとき、右翼鈴木誠がスライディングキャッチしたとき、そして7点ビハインドの6回に堂林が適時二塁打を放ったとき…。大きな拍手がマツダスタジアムを包んだ。

好投手菅野が先発する巨人を倒すゲームプランが崩れた。先発九里は前回までの2試合と同じ3イニング目に失点。先頭菅野へのストレートの四球から4失点のビッグイニングで流れを切った。2番手D・ジョンソンは6回に2つの失策が絡んで3失点。拙守が重なった分だけ、7点ビハインド以上の重みが感じられた。

攻撃陣は好投手を相手に最低限の役割をこなした。先発菅野に5回までわずか4安打無得点も、5回まで109球を投げさせた。無抵抗ではなかった。大量得点差もあって菅野が降板した6回以降は、巨人中継ぎ陣から毎回の6安打2得点と意地を見せた。

僅差に持ち込むゲームプランを遂行できず、連勝が止まった。無観客での本拠地試合は1勝3敗の負け越し。佐々岡監督が「ファンの声援が選手の力になると思うので、また頑張っていきたい」と話していた有観客試合初戦も黒星発進となった。本拠地試合はまだ55試合残っている。ファンの拍手に応える使命はある。【前原淳】