巨人猛追の使者は帰ってきた背番号19だ! 阪神藤浪晋太郎投手(26)が、23日の広島戦(甲子園)で今季1軍初登板初先発する。昨年8月1日の中日戦以来の1軍マウンドで、18年9月29日の中日戦以来663日ぶりの勝ち星を狙う。チームは4連勝で5カード連続勝ち越しを決め、勝率5割に復帰。今週の5位広島、6位中日との6連戦で貯金量産を目指す。藤浪が4・5差で首位巨人を追う猛虎進撃の起爆剤になる。

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空は青く澄み渡る。芝生と黒土の匂いも心地よい。かつての“申し子”の帰還を喜ぶかのような甲子園。投手の指名練習に参加した藤浪は、終始リラックスした表情で汗を流し続けた。

「あまり空回りせず、いつも通り試合に入っていけたら。もちろん気合は入りますが、力み過ぎないことも心掛けて試合に臨みたい」。先発予定の23日広島戦へ。高ぶる感情を制御するように自然体を強調した。

昨季の1軍登板は1試合のみ。自身初の0勝を経験した。背水の覚悟で臨んだ今年は3月下旬、新型コロナウイルスに感染。5月下旬には遅刻が理由で2軍に降格した。負傷も乗り越え、ようやくつかんだ357日ぶりの1軍チャンス。逃す訳にはいかない。

右胸の筋挫傷から実戦復帰後は2軍戦4試合登板で計16イニング連続無失点。ここ数年の課題とされてきた対右打者も、角度のあるアウトロー球で次々に抑え込んできた。「全体的にいい状態」と手応えはある。

対戦相手はカープ打線。プロ8年間で通算11勝10敗と勝ち越しているが、近年は制球難もあって苦しんでいる印象が強い。負のイメージを今季初登板で吹き飛ばし、一気に完全復調を印象づけたいところだ。

侍ジャパンの4番も任される主砲鈴木は同学年。今年2月には「シーズンで対戦するのが楽しみ」とエールを送られている。「すごい打者が楽しみにしてくれていることはうれしい。見応えのある勝負ができたらなと思います」。注目の対決を制することができれば、道は開ける。

チームは5カード連続勝ち越しを決めて4連勝中。最大8あった借金を完済し、3位に浮上している。首位巨人を猛追する中、最大の起爆剤と表現できる藤浪も結果を出せば、勢いが加速するのは間違いない。

矢野監督は「やってやるという気持ちがあると思う。その気持ちをぶつけて投げてもらえれば」と期待感を隠さない。663日ぶりの白星へ。藤浪は「見に来ていただく方々にいいプレーを見せられるように頑張りたい」と誓いを立てた。【佐井陽介】

<今季の阪神藤浪>

▼コロナから復帰 3月26日深夜に新型コロナウイルス感染が判明し、翌27日から入院。4月7日に退院した後は自宅待機を続け、同24日から鳴尾浜で自主練習を開始。

▼練習再開後に好投 「分離練習」が再開した5月19日から甲子園練習に合流し、同23日から1、2軍に分けられた「集合練習」でも1軍練習に参加。同24日のシート打撃で67日ぶりの実戦形式のマウンドに上がり、打者5人に完全投球。

▼2軍降格 5月28日の1軍練習に遅刻。ペナルティーとして同29日から無期限の2軍降格となった。

▼緊急降板 6月3日のソフトバンクとの2軍練習試合(鳴尾浜)で降格後初登板も、右胸の張りを訴えて3回途中3失点で緊急降板。後日「軽度の右胸筋挫傷」と診断された。

▼無失点継続 6月19日の日本生命とのプロアマ交流戦で実戦復帰。7月16日の2軍オリックス戦まで復帰後4戦16イニング無失点。