阪神近本光司外野手(25)が、試合開始早々にいやな流れを断ち切った。初回、ヤクルト吉田喜に3球で追い込まれたが、そこからファウルで粘った。8球目の高めに入ったフォークを見逃さず右前打。続く北條への3球目には、迷わず快足を飛ばして二盗成功。2年連続の20盗塁を決め、先制機をつくり上げた。

打線が猛攻を仕掛けた7回には、代打中谷が押し出し四球を選んだ直後に、初球をはじき返しダメ押しの2点打。「中谷さんに対して制球も定まっていなかったので、初球から打つべきボール絞っていきました。追加点を取ることができて良かったです」。最終回にも中堅への三塁打で9点目を奪うなど、4安打3打点で今季9度目の猛打賞。2回裏の守備では、エスコバーの大飛球をフェンスに当たりながらジャンピングキャッチし、攻守でいい流れを呼び込んだ。

惜敗した前夜は、思いもしないことで、クローズアップされた。26日の1点を追う8回裏の開始前、矢野監督と審判団が口論に発展する騒動があった。発端は7回表の攻撃で、小幡の本塁アウトについてのリクエスト協議中、次打者席にいた近本がバックネット裏記者席とやりとりしたかについてだった。この日の試合前には、セ・リーグ杵渕統括が神宮を訪れ、騒動の終焉(しゅうえん)を宣言。グラウンド内外で、スッキリとする夜となった。

矢野監督は計16安打とスカッとした打線に「1人でも多く1本ではなく複数安打していけば、チームの気持ちも上がってくる。そういう試合で(連敗を)止められたのは、1人1人にとっても良かったかな」と話した。6、7月に1割台だった近本の打率は、この日の活躍で2割9分5厘。自身初の打率3割台も見えてきた。チームの緊急事態のなか、頼りのリードオフマンが元気を取り戻した。【磯綾乃】