先発の広島九里亜蓮投手(29)が9回7安打無失点の力投を見せ、自身2度目、今季初完封で5勝目を挙げた。最速148キロの直球を軸に、強力DeNA打線から4者連続三振を含む7三振を奪った。今季最多1万5602人が駆けつけた試合で、魂の133球。チームの最下位転落危機を救った。

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133球目、渾身(こんしん)の直球で押し込んだ打球が左翼野間のグラブに収まった。九里は右の拳で思いっきりグラブをたたき、ガッツポーズで満面の笑みを浮かべた。9回7安打無失点。昨年6月25日楽天戦以来、プロ2度目の完封勝利を飾った。「今シーズンは長いイニングを投げられた試合がなかったので、長いイニングを投げられてよかったです」と喜んだ。

直球がさえ渡った。最速148キロの切れ味鋭い直球を武器に、スライダー、フォークを低めに集め、強力DeNA打線を手玉に取った。初回2死の佐野から立て続けにバットを振らせ、4者連続の空振り三振を奪った。3回1死一、二塁からソトの一、二塁への打球を菊池涼が好捕し、併殺でピンチを脱した。再三の好プレーをみせた守備の名手に九里は「ヒットになるような当たりも取ってくれた」と感謝した。

「9番打者」としても奮闘した。「自分は打つセンスがない。投げていても粘られているのは嫌なので、そこを徹底していこうと思った」。5回1死二塁の打席では空振り三振に倒れたものの、6球ファウルを打つなど粘った。7回1死三塁で迎えた打席では山崎康の直球にくらいつき、内野ゴロで追加点を奪った。

小さな“ファン”のエールに心を動かされた。試合に向かう時のことだった。「しゃべれるようになった息子が初めて『頑張ってきてね』と言ってくれた。その言葉を忘れずに、いいところをみせられるようにと思った」と明かした。2歳の長男の一言が、完封勝利の原動力となった。【古財稜明】

▽広島佐々岡監督(完封勝利を挙げた九里に)「粘り強く投げてくれた。完封は本人にとっても、チームにとっても大きいと思う。(3回の)キク(菊池涼)のプレーがすごく大きかった」