今日にもセ界記録。広島菊池涼介内野手(30)が敗戦の中で好守を連発した。開幕から連続無失策を続け、同一シーズンの連続無失策記録を428に伸ばした。あと4つに迫る93年和田豊(阪神)のセ・リーグ記録に、15日にも追いつく。二塁手補殺数のシーズン最多記録を持つ名手が、新たな領域に足を踏み入れようとしている。

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優勝へ突き進む敵地のファンを、菊池涼は守備で黙らせた。3回1死一塁。二遊間のゴロに飛びついた田中広の二塁へのトスが山なりとなり、二塁封殺のみと思われた瞬間だった。しゃがみながら捕球した菊池涼は素早く体を反転させて一塁へ。力強い送球が一塁松山のミットに収まり、通算155盗塁の打者走者坂本を刺した。広島ファンの歓声と、巨人ファンから漏れた驚嘆の声が混ざったざわつきはしばらく続いた。

4回にも先頭丸の二遊間を抜けそうな速いゴロに追いつくと、ステップしながら反転してジャンピングスロー。一塁松山も思わず驚きの表情を見せるほどの送球で、通算159盗塁の丸の安打をもぎ取った。好守連発で不安定な立ち上がりの遠藤をもり立てた。佐々岡監督も「遠藤があそこまで投げられたのは内野のプレーのおかげ」と認めた。

今季、チームは開幕から低迷。自身も思うように成績が伸びず、打順も固定されない。苦しい戦いが続く中でも「守備はミスをしちゃいけない。100%でないといけないと思っている。守備は守備、打撃は打撃と切り替えてやっている」と名手としての自負を口にしたことがあった。

計算された予測とスピードで広大な守備範囲を誇る。かつてともにプレーした黒田氏と新井氏がともに認めた強肩が異次元のプレーを可能にする。そこに尽きない向上心が加わることで、今季は開幕から連続無失策を続ける。同一シーズンの連続無失策記録は428まで伸び、93年和田豊(阪神)が持つセ・リーグ記録432に4つと迫った。7年連続ゴールデングラブ賞受賞、二塁手シーズン最多補殺記録(14年、535補殺)を誇る名手が、新たな領域に足を踏み入れようとしている。

好守から反撃に転じることができずに敗れ、6年ぶりの巨人戦の負け越しが決まった。佐々岡監督は「悔しさはみんな持っている。明日、ドームが最後なので、頑張ります」と厳しい表情を見せた。敵地最終戦は勝って、巨人ファンを黙らせたい。【前原淳】

▼菊池涼は、二塁手としての今季開幕からの連続守備機会無失策記録を428に伸ばした。同一シーズンのセ・リーグ最長、93年和田豊(阪神)432にあと4とした。なおプロ野球最長は94年白井一幸(日本ハム)の545。連続シーズンプロ野球最長は、関本健太郎(阪神、後に賢太郎)が05~07年に記録した804。