猛虎の若き主砲候補が、歴史的デビューを飾った。阪神のドラフト2位井上広大外野手(19)が中日戦に「7番右翼」で昇格即スタメン出場。球団高卒新人野手のデビュー戦先発出場は68年川藤幸三以来の抜てきとなった。3打数無安打でプロ初安打はお預けとなったが、将来性豊かなスラッガーがプロの第一歩を踏みしめた。

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井上が記録的デビューを果たした。スタメン発表される「7番、ライト、井上」のコールに、ナゴヤドームがどよめいた。プロ初昇格で即先発出場。球団高卒新人野手のデビュー戦先発は、68年川藤以来52年ぶり。「1つ1つのレベルが、とても高いと感じた」。プロ初安打はならなかったが、背番号32が豪快スイングでベールを脱いだ。

球界屈指の好投手に対し、果敢にバットを振った。プロ初打席は2回2死一塁。エース大野雄に向かった。カウント0-1からフォークに初スイングで空振り。3球目もフォークに空振りすると、4球目の低め140キロツーシームにバットは空を切った。スラッガーらしい3スイングの三振デビュー。防御率リーグ1位左腕に3打数無安打と抑えられ「(膝下に)何度も同じボールを投げられ、同じような空振りをしていた。そこはもっと練習して対応できるようにしていかないといけない」。プロの洗礼も浴びた。

2軍で英才教育を受けてきた。ウエスタン・リーグで61試合に出場し、打率2割2分、8本塁打、32打点をマーク。平田2軍監督のもとで全試合4番起用され、本塁打、打点で2冠の成績を残した。そしてシーズン終盤で、いよいよゴーサインが出た。

矢野監督は合流した井上に「今日からがスタートラインだよ」と声をかけた。指揮官は結果もさることながら「チームとして大事にしている全力疾走や、将来ホームラン王をとるけど凡打後の走塁もすごいよねとか。そういう部分をしっかり意識する選手になって。スケールの大きな選手になってくれれば」と、大きな期待を込めた。

試合前には1軍本塁打キングの大山から「小さくはならないように」と、貴重なアドバイスも受けた。「その(スイングの)中で、どう対応していくかを練習で突きつめていきたい」。大きく成長していくため、さらに高いレベルで技術を吸収していく。シンデレラストーリーは始まったばかり。虎の将来を担う19歳が、大きな1歩を踏み出した。【奥田隼人】