虎が佐藤を引いた! プロ野球のドラフト会議が26日に都内で開催され、阪神が4球団の競合の末、アマNO・1スラッガー近大・佐藤輝明内野手(4年=仁川学院)の交渉権を獲得した。

大学生野手の4球団競合は、1980年(昭55)東海大の原辰徳(巨人)以来40年ぶり。当たりくじを引き当てた矢野燿大監督(51)は渾身(こんしん)の矢野ガッツ。佐藤輝も新人王、ホームラン王、トリプルスリーのビックな目標を掲げ、優勝貢献を誓った。

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佐藤輝は伸びた髪の両サイドを刈り上げ、運命の時を待った。矢野監督が当たりくじを引き当てると、緊張の表情はほんの少し緩んだ。「地元の球団で身近な球団だったので、良かったと思います」。甲子園のお膝元、西宮出身のアマNO・1スラッガーがタテジマの戦闘服に身を包む。

オリックス、阪神、ソフトバンク、巨人から1位指名を受けた。大学生野手の最上位指名(外れ1位除く)では、80年東海大の原辰徳以来40年ぶりの4球団競合。甲子園は小さい時から足を運び、小学6年時にはタイガースジュニアでもプレーした。不思議な縁が、阪神入りを引き寄せた。矢野監督からは画面を通じて「夢を与えてもらえるような選手に」と期待をかけられ、表情を引き締めた。

同じ左打ちの外野手イチロー氏が憧れだった。「メジャーリーグで1人だけ日本人、体格も小さい中で結果を出すというのはすごいなと思いました。夢を与えてもらった選手だと思います」。今度はプロ野球選手として、夢を与える番だ。「小さい時からイチロー選手が好きだった。そういう夢を与えられる選手になりたい」と目を輝かせた。

高校時代は無名だった。甲子園出場もない。ターニングポイントは高校2年から始めたウエートトレーニング。「体つきも変わった。そこからホームランが打てるようになった」。大学では田中秀昌監督(63)らの指導を受け、才能を開花させた。関西学生野球リーグでは14本塁打を放ち、OBで元巨人二岡智宏(現巨人3軍監督)が持つリーグ本塁打記録を22年ぶりに更新。リーグVも手土産に運命のドラフトを迎えた。

会見ではプロ入りを支えてくれた両親にも感謝した。日体大柔道部出身(86キロ)の父、博信さん(53)から教えられた言葉を大事にしている。「勝負事というのは相手があって、相手はコントロールできない。しっかり自分のできることに集中して取り組め」。

掲げた目標は「新人王」「ホームラン王」「トリプルスリー」とスケール壮大。大学でプレー経験のある甲子園ではまだアーチをかけていない。「浜風に負けないような強い打球を打ちたいと思います」。16年ぶりリーグV奪回へ、タテジマの佐藤が猛打を振るう。【奥田隼人】