阪神藤川球児投手から最も安打を放ったのは、ラミレス(DeNA)。2位で二岡(日本ハム)と並び日本人トップの13安打を記録したのが、荒木(中日)だ。現中日内野守備走塁コーチは打席で見た火の玉ストレートを懐かしんだ。

「藤川の真っすぐは、伸びがすごかった。普通の投手と同じ感覚でいくと、ボールの下を空振りしてしまう。全盛期の工藤さん(現ソフトバンク監督)の真っすぐに近いイメージだった」。

バットに当てて、ヒットゾーンに運ぶ。攻略法はシンプルだった。「みんながボールの下を空振りしている。それならボールの上を打つくらいのイメージで打てばいい」。その代償として、藤川との対戦では8位タイとなる11三振を奪われた。

18年に現役を引退し、藤川の登場を三塁コーチャーズボックスから見つめた。敵ながら、その姿につい見入ってしまう。「雰囲気がいい。リリーフカーに乗って出てくるのを見ているとゾクゾクする」。名球会入りした名選手もしびれる存在感だった。「素晴らしい数字を残しているけど、失敗も多いはず。それだけの経験を積んできた。いつかはそれを球界につなげて欲しい」。一流の道は、失敗と成功の積み重ねだ。かつてのライバルが、熱いエールを送った。