阪神矢野燿大監督(51)が甲子園秋季練習2日目の16日、復活の気配漂う藤浪晋太郎投手(26)に「ダルスラ」挑戦を指令した。今季は中継ぎに配置転換された9月下旬以降に状態を上げ、先発復帰後も快投を続けたままシーズンをフィニッシュ。指揮官は背番号19の来季先発スタートを明言した上でさらなる進化を願い、カブス・ダルビッシュの球筋をイメージしたスライダーの習得にも期待をかけた。

   ◇   ◇   ◇

矢野監督の口調が次第に熱を帯びた。藤浪完全復活への課題を問われたタイミングだ。基本だという直球の強さ。フォークの精度。そして、何より「縦スラ」の習得に期待した。

「もうちょっと(曲がり方が)縦の方がいいと思っている。横に流れると抜けたり引っ掛かったりの幅がデカくなるから。斜めに曲がる形ならベース幅の中で空振りが取れるし、打者も見極めにくい。(腕の縦振りで)肘が上がってくる。真っすぐも縦に来る。フォークもたたきやすくなる」

現状、藤浪の持ち球は「横スラ」。指揮官の考えでは、この軌道だと左打者に対応されやすくなる。1軍作戦兼バッテリーコーチだった16、17年にも「斜めの方がいいんちゃうか? その方が打者は嫌やぞ」と助言していたという。

イメージはカブス・ダルビッシュの球筋だ。

「ダルビッシュとかすごいのは、ベース板の中でカーブっぽく斜めに縦に落ちる。あれは右打者でも左打者でも見極めにくい」

今季ナ・リーグでサイ・ヤング賞2位に輝いた大投手は藤浪にとっても、18年1月に米テキサス自主トレを共にした尊敬する先輩。新球の習得へ、モチベーションには事欠かない。

今季は中継ぎに配置転換された9月下旬以降に状態を上げた。中継ぎ13試合で失点は2試合のみ。力強い直球を取り戻し、球団最速の162キロも計測した。10月下旬の先発復帰後も計15回を自責点0。来季に向け、すでに完全復活の予感がプンプン漂っている。

この日、矢野監督は右腕の来季先発スタートを明言した。

「先発でやっていきたいなと思っているよ。チームのバランスを考えても、今の時点では先発の方が(チームと本人と)どちらのためにもなるのかなと思っている」

チーム事情によって再び中継ぎに回る可能性も残すが、基本は先発でフル稼働を目指すことになる。

「晋太郎の第何ステージになるのか分からないけど、そういう土台になりうる年やし、そうして欲しい」

指揮官の強い願いも力に変え、背番号19が挑戦を続ける。【佐井陽介】

◆阪神藤浪の球種 直球は球団最速の162キロを計測。変化球は主に3種類を使い分ける。カットボールは130キロ後半、スライダーは130キロ前後。本人がスプリットとも表現する高速フォークは常時140キロ後半のスピードと、大きな落差を誇る。120キロ台のカーブも持ち球の1つ。