ソフトバンク小久保裕紀ヘッドコーチ(49)が15日、福岡・筑後市のファーム施設で行われている新人合同自主トレを視察。就任会見以降初めて、公に球団施設を訪れ“初仕事”を行った。

新人選手を前に、プロでの心構えを訓示。自身が現役時代に守った三塁に挑む、ドラフト1位井上朋也内野手(17=花咲徳栄)には「自分の18歳の時よりうまい」と高く評価した。

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小久保ヘッドコーチがサングラスの奥から、眼光鋭く新人たちを見つめた。現役引退した12年以来、9年ぶりのソフトバンク復帰だ。野球解説者として外からチームを見てきた時とは、感じ方も違う。「この子たちは、出会う人によって(将来が)変わる選手もいると思う。本気で携わる者として、責任重大やなと思いながら、選手を見ていました」。若鷹たちの未来に思いをはせながら、背筋を伸ばした。

練習前の集合時には、ルーキーに助言を送った。技術や練習の話ではなく、プロの世界に臨む心構えを2つ説いた。「1つはメモを取る習慣を付けること。人間は忘れる生き物なので」。監督やコーチと話したことだけでなく、自分で感じたこともしっかりメモに残すよう促した。「もう1つは、空いている時間をどう自分のために使えるか。自分のためになる勉強だったり、体の手入れだったり。細かいことの積み重ねができた人の勝ちだと思う」。プロ19年間で積み重ねてきた経験を、惜しみなく伝えた。

自身が現役時代に主戦場とした三塁に挑む、ドラフト1位井上にも熱視線を送った。高校通算50本塁打の力強いスイングに「正直、自分の18歳の時より数段うまい。18歳にしてはスイングも強いですし、ボールを飛ばせる下半身の使い方をしている」と絶賛。「順調に伸びてもらいたい」と将来を期待した。井上自身も、小久保ヘッドとの初対面に「テレビで見ていた方。お話を聞いて、やってやろうという気持ちになった。これからが勝負だとあらためて感じました」と気を引き締めた。

小久保ヘッドが現役時代に過ごした西戸崎のファーム施設とは様変わりした。打撃マシンも24時間使い放題だ。「設備はぜいたくすぎる。ここの施設でうまくならないなら、日本のどこに行ってもうまくならないというくらい。やるかやらないかは自分自身」。かつて「練習の鬼」と呼ばれた男が古巣の指導者としての第1歩を踏み出した。【山本大地】