キャンプ地ならではの風物詩が、12球団に存在する。巨人のキャンプ地・宮崎のメインスタジアム、ひむかサンマリン宮崎の正面入り口には、巨人ファンにはおなじみの名物警備員・河野保敏さん(48)が構える。巨人キャンプの警備を始めて約25年。ファンが殺到してもアクシデントが起こらないよう、時には体重約3ケタの愛らしい体格を盾にもし、4人の監督を守ってきた。長嶋茂雄、原辰徳、堀内恒夫、高橋由伸-。誠実な警護ぶりで、歴代指揮官から愛されてきた。

着実な仕事ぶりからくる信頼関係が下地にある。キャンプ2日目、球場正面付近で車を降りた原監督がふと動きを止めた。「元気?」。優しい視線は河野さんに向けられていた。「痩せた? 500グラムぐらい減ったでしょ。よろしくね!」。冗談交じりのあいさつに、指揮官からの信頼感と親近感がかいま見えた。

河野さんの存在が広く知られたのは偶然の出来事からだった。長嶋監督が今は2軍が使用するひむかスタジアムに隣接するブルペンから出てきた際、足もとをとられてバランスを崩した。付近で警備にあたっていた河野さんは、とっさに体を支えにいった。その結果、長嶋監督と「相撲のまわしをつかみ合う」格好になったという。「その時、テレビ局のカメラが2台ありまして…そこを撮影していたんです。まさか(放送で)使わんだろうと思ったら出てしまいまして…そこからいろんな人に声を掛けてもらえるようになりました」。長嶋監督と“相撲をとった”警備員として認識された。以降、キャンプを訪れるファンからも名物警備員として親しまれている。

新型コロナの影響で、今年のキャンプは無観客。いつもなら耳に届く、正面玄関付近で指揮官の到着を待つ人々の高揚した話し声は聞こえない。人の気配も音もない正面玄関に1人で立つ。さぞ、さみしいだろう。悔しいだろう。そんな感傷的な予想を裏切るように、たくましい首を大きく横に振った。「世の中が大変なので、これは仕方がないです。状況が変わろうが、自分たちがやることは、何も変わらないです」。監督が安心してキャンプ地の各グラウンドを行き来できるように-。今年はマスクとフェースガードを装着した河野さんら警備員が、巨人キャンプの安全を縁の下で支えている。【浜本卓也】

巨人担当のツイッターはこちら―>

巨人ニュース一覧はこちら―>