阪神藤浪晋太郎投手(26)がプロ9年目で初の開幕投手を任されることが8日、決定した。矢野燿大監督(52)が明言した。

3月26日のヤクルト戦(神宮)で先発マウンドに上がる。開幕投手の大本命だった西勇輝投手(30)は開幕2カード目初戦の3月30日広島戦(マツダスタジアム)に向かう。昨季1勝右腕が大役に抜てきされた理由とは? 指揮官の言葉から2つの意図が浮かび上がった。

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悩み抜いた末の決断だった。矢野監督は自ら「開幕藤浪」を公表した。

「開幕投手は晋太郎にした。総合的にいろいろ考えた結果、晋太郎で行ってみようかな、と」

博多遠征遠征中の7日、甲子園残留組練習に参加していた右腕に通達した。

球界屈指の潜在能力を持つ右腕とはいえ、復調を印象づけた昨季もまだ1勝どまり。なぜ、最終的に藤浪を指名したのか。指揮官の言葉から2つの大きな意図が浮かび上がった。

◆「週頭」と巨人戦 矢野監督は藤浪の3・26ヤクルト戦先発を明言した後、「現状、普通に考えてエースは(西)勇輝」とあらためて信頼を言葉にした。当初から開幕投手の大本命だった大黒柱は開幕2カード目初戦の3・30広島戦に向かう流れが確実だ。

首脳陣が開幕投手と同等レベルで重視するのが6連戦の初戦、「火曜日の男」だ。4月は巨人との3連戦が週明けに2度も組まれている。確実に長いイニングを計算でき、昨季巨人戦5試合で3勝1敗、防御率1・77の西勇をカード頭で王者にぶつけたい狙いが見え隠れする。

◆復活はVの絶対条件 藤浪は昨季、球団最速162キロを計測するなど復調。ワインドアップに再挑戦中の今春は明らかに制球の精度、安定感が増している。2月から実戦計4試合12イニングを1失点。「無理だったら(開幕投手に)しない。あいつも苦しんだ中からここまで来た。このキャンプの姿、ボールを見て」。誰の目にも明らかな再覚醒も抜てきを後押しした。

16年ぶりのV奪回を目指す上で、大器の完全復活は絶対条件に近いモノがある。「華も(含めて)総合的にだよね。チーム全体のことを考えた時、シーズンが終わる時に勇輝に追いつけ追い越せという投手になってもらいたいというのもある。オレらが優勝するというところも含めて、総合的にオレが考えた結果、そうした」。指揮官は背番号19に対する思いも熱弁した。

3年ぶりの開幕ローテ入りどころか、プロ9年目で初の開幕投手を任される。当然プレッシャーが重くのしかかるが、それを乗り越えてこそチームの柱だ。

開幕ローテは藤浪から順に青柳、秋山、西勇、チェンと続き、最後の1枠を伊藤将、西純、ガンケルらで争う構図で定まった。藤浪から頂点へ。虎が早速、勝負手を打つ。【佐井陽介】

▽阪神福原投手コーチ(開幕投手藤浪に) 期待しています。ブルペンでもいい顔をして投げている。自信を持って投げている。いい顔で投げてくれればいい。やってきたことをしっかり出してくれたらいい。(勝てば)勢いがつくと思うし、どう転んでもいい影響はあると思います。

<藤浪の今春>

1月25日 鳴尾浜のブルペンで再挑戦中のワインドアップ投法を初披露。新フォーム導入の理由は「加速距離」を取るため。

2月2日 1軍沖縄キャンプのブルペンで足を上げた際に1度三塁側に視線を移す新スタイルを披露。

2月7日 21年初実戦の紅白戦は2回を無四球3奪三振1安打無失点。ドラフト1位佐藤輝から空振り三振を奪い、最速156キロ。

2月21日 対外試合初戦の広島戦で3回3奪三振2安打1四球無失点。147キロスプリットで驚かせた。

2月27日 中日戦で3回を3安打1四球1失点。中日側のスピードガンで最速158キロを計測。

3月1日 矢野監督からキャンプ投手MVPに選ばれ「ちょっとビックリ」。

3月5日 ソフトバンク戦で4回2奪三振3安打2四球無失点。最速158キロでスプリットは149キロ。

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