宮城・大崎市出身で、関西学生リーグの立命大(京都)千坂優斗投手(2年=宮城・古川)は名門野球部でただ1人、理工学部に在籍する。最速143キロの“文武両道右腕”だ。昨年はコロナ禍の影響で激動の1年間を過ごした。多忙な授業スケジュールの合間を縫っては練習に打ち込んだ。将来は大卒プロ入りを意識する一方で、数学の教員免許取得を目標に掲げる。

大学2年目のシーズンへ、千坂は鼻息を荒くした。「リーグ戦デビューを果たし、チーム目標の日本一に貢献したい」。1年時はチャレンジリーグなど下級生主体の公式戦登板を経験。今冬から投球フォームを見直し、体重移動を意識した下半身トレーニングで汗を流す。「球速以上に打者が速く感じる直球を投げ込めれば、上のレベルでも通用すると思う」。大きな目標はプロ入り。まずは今春リーグ戦登板を見据える。

学業にも手を抜かないのがポリシーだ。理工学部数理学科に在籍。数学教員を志すため教職課程も履修する。当然ながら授業数は多く、「大変です。微分積分の本質とかを求められるので、内容もかなり難しい」と悪戦苦闘も、単位は1つも落としていない。コロナ禍で入学当初からオンライン授業。キャンパス内での講義はなく「野球部の選手しか見たことがない。学部に1人も友達がいないのは寂しい」と一番の悩みを打ち明けた。

アイドルグループ「日向坂46」が、文武両道を励む中での一服の清涼剤だ。「デビュー当時から好き。推しメンは小坂菜緒さん」と、高2からの筋金入りのファンだ。年末年始の歌番組、小坂が出演するバラエティー番組は逃さずに視聴した。クリスマスイブには無観客ライブをネット視聴し、「高校生の時よりも(日向坂46への)熱量は増した」と笑う。

関西で人生初の1人暮らし。洗濯と自炊は手慣れたもので、得意料理は「親子丼」だ。それでも「母の味と比べたら足元にも及びません。久しぶりに手料理が食べたいな」とおふくろの味を恋しがった。真面目な性格で、昨年はコロナ禍の状況を鑑みて、1度も帰省をしなかった。「宮城でお世話になった方々はたくさんいる。帰省できなかったけど、その分、自分の投げている姿を届ける」。故郷を思いながら飛躍の1年にしてみせる。【佐藤究】