虎打線がセ・リーグのトップを走る数字をご存じだろうか。渋くてあまり目立たないけれど、21年の強みが如実に表れている「11」という数字だ。

首位を快走するだけあって、今季のチーム打撃成績一覧を見ると1位のデータがこれでもかと並ぶ。

昨季リーグ5位だったチーム打率は2割6分4厘で1位。昨季4位タイだった本塁打数も29発で1位。昨季最下位だった安打数もここまで217安打で1位タイを記録している。

中でも断トツなのが123得点と119打点、そして11犠飛だ。この3部門は昨季すべて4位。それが今季は他の5球団を大きく突き放している。ちなみにリーグ2位はそれぞれ106得点、99打点、6犠飛で差は歴然だ。

以前、4番主将大山悠輔は確かに今季のチーム方針を明かしてくれていた。

「今年のテーマとして、取れる点数をしっかり取るというところがある。もちろんヒット、ホームランの得点が一番いいとは思うけど、犠飛だったり内野ゴロ…そういった1点が試合終了時に大きくなる。そういった仕事ができるように、引き出しを多く作りたい」

4月18日、甲子園ヤクルト戦に大勝した後の言葉だ。

この日の1回裏。大山は3連打後の無死満塁、フルカウントから先制の右犠飛を決めていた。イケイケムードのまま豪快に振り抜きたい場面でもエゴを排除。外角低めの直球を逆らわず丁寧に打ち上げ、チームを16安打10得点に導いていた。ここに21年虎打線の強みがある。

もちろん、ドラフト1位佐藤輝明を筆頭にしたド派手なアーチ合戦には夢がある。ただ、やはり打線は水物。いずれ停滞期が訪れた時、引き出しが多いに越したことはない。

昨季120試合で23だった犠飛数が25試合終了時点で早くも11。個人ランキング1位の座にも4犠飛の大山がいる。この流れは決して偶然ではないだろう。

もともと、虎はスモールベースボールを得意とするチームでもある。矢野燿大監督の考えが植えつけられた結果、積極走塁への意識も高い。今季も19盗塁は1位に1個差のリーグ2位。12併殺はもっとも少ない。昨季リーグ1位の犠打数は今季も21で最多。そんな「足攻めの虎」に「取れる時に取る」意識が今まで以上に浸透したことで、得点力が上昇している。

25日の甲子園DeNA戦では1点を追う7回裏1死二、三塁、大山が中犠飛で試合を振り出しに戻している。浅めの飛球で三塁走者近本光司がホーム生還。さらに二塁走者糸原健斗も三塁を陥れてプレッシャーをかけたことで、5番ジェリー・サンズの勝ち越し2ランが生まれた。

地道に得点の確率を上げつつある虎打線。1発頼みではないスタイルに、16年ぶりのV奪回に懸ける本気度がうかがえる。【佐井陽介】

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