かつての庭で、虎の窮地を新助っ人左腕が救った。阪神チェン・ウェイン投手(35)がロッテから移籍後初登板の中日戦(バンテリンドーム)で6回5安打1失点と好投。古巣相手にシーズンでは11年10月2日阪神戦以来、3497日ぶりのNPB勝利を挙げた。中日時代に同球場で18勝7敗と高勝率を誇った左腕の奮闘で、チームは同一カード3連敗の危機を回避。今季デーゲームで無傷の10連勝と必勝神話も継続した。

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ユニホームは変わっても、バンテリンドームでチームを勝利に導くことは変わらなかった。懐かしいチェンの姿に、古巣のファンも温かい拍手を送っていた。試合後のお立ち台。「久しぶりにナゴヤドームで投げることが出来ましたので、すごいうれしい。名前は変わってるかもしれないけど、僕のイメージはナゴヤドーム。ここで阪神ファンが来て応援してくれたのが、自分は幸せ」。流ちょうな日本語に、球場にいる誰もが笑顔になった。

3回まで毎回走者を背負ったが、2、3回とも併殺で打ち取るなど要所を締めた。どちらの併殺も変化球でのもの。「自分にとっては最大のピンチだったので、ゲッツーで切り抜けたのは本当に良かった」。3本の二塁打を浴びながら、6回5安打1失点。最速は144キロ。大リーグを経験するなど、多くの舞台を踏んできた左腕は、変化球を効果的に組み合わせ、古巣を打ち取った。

中日からオリオールズ入りが決まった12年1月。ケガから再起を目指す大野雄と吉見の自主トレに、志願して参加した。福岡・八女市を訪れ、プロ2年目の大野雄に「腕を体に巻き付けろ」と助言。「お前はいい投手になるはずだから、頑張れ」と託した。自分を育ててくれたチームに、財産を残したい思いが行動に表れた。阪神復帰後も連絡を取り合う仲。「チェンさん投げるなら、僕は絶対ヒット打ちます」「打たさねー」。かつての後輩は沢村賞左腕に成長し、刺激し合えるライバルに。しかし、頼もしい「先輩」の姿は変わらなかった。

チーム3連敗の危機を救った。チームを助けたウイニングボールは、自分を助けてくれた人へ贈る。「奥さんにこのボールをプレゼントできればなと思っています。コロナで来たくても来られない状態が続いているけど、自分がファームにいた時も、奥さんの励ましがあって、今こうやって自分がある」。中日時代に18勝を積み上げた思い出の球場。古巣相手の10年ぶりNPB勝利から、虎のチェンがスタートを切った。【磯綾乃】

▼阪神矢野監督(チェンについて)「(援護の)4点が逆に難しさの部分がある。1点、2点の方がいい緊張感というか。そういう難しさもありながら、初登板やったし、コントロールして投げてくれたのは、今までの経験をしっかり出した投球をしてくれたかなと思う」

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