阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手(22)が4Kの屈辱を一夜で晴らした。「日本生命セ・パ交流戦」の日本ハム戦で、仰天のタイムリー二塁打を含む2安打2打点。前日8日にはプロ初の5番起用で4打席連続三振を喫したが、リベンジに成功した。球団新人野手で初めて月間MVPを獲得。怪物ルーキーが5番で機能し、2位巨人と今季最大の5ゲーム差。矢野阪神が独走態勢に入った。

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北の大地に、大きな穴があきそうだった。5回1死一、三塁。佐藤輝が谷川の内角低めスライダーを強振。打球は自らの足元でバウンドすると、大きくはずんだ。そのまま一塁手の高浜の頭上を越し、右翼線へ抜けた。2者が生還。「いい場面で回って来ましたし、いつも通りしっかり自分のスイングをしようと思っていました。いいところに弾んでくれて、ツイてました」。本人はツキと表現したが、ラッキーヒットではない。驚異のパワーが仰天のタイムリー二塁打を生んだ。

4回には1死一塁から中前打を放ち、5番初安打をマーク。続くサンズの二塁打でベースをフルスピードで駆け回り、3点目のホームを踏んだ。マルチ安打はこれで17度目。一夜で怪物ルーキーは息を吹き返した。

気持ちの切り替えの早さは、一流選手の条件の1つだ。前夜は屈辱にまみれた。プロ初の5番に座り、プロ初の4三振。「今日も2つしましたけど、しっかり振るということを常に心掛けています。昨日のことは切り替えて新しい気持ちで試合に臨んで、しっかり2本打つことができたので良かったです」。どんなに空振りしても、信条のフルスイングに揺るがない。矢野監督は「持って生まれたものというか、あいつの中のそういうものがあるんじゃないの? あんまり動じないもん」と感心しきりだった。

この日、「5月度大樹生命月間MVP賞」が発表され、佐藤輝は初受賞を果たした。「素直にうれしいですし、これからもどんどんと取れるようにやっていきたい。開幕当初よりは慣れてきた部分もあって、状態も上がってきたかなと思います」。新人野手の受賞は球団初の快挙。数々の記録を作ってきたルーキーには、新たな勲章となった。

2ケタ得点の快勝で、2位巨人とは今季最大の5ゲーム差に広がった。3連勝を目指す札幌最終戦。「6番を打っている時と変わらず、ランナーがいる場面で回って来ることが多いので、チャンスでしっかりかえせるようにしっかりやっていきます」。さあ、北の大地で特大アーチを描こう。【磯綾乃】

○…第3戦の日本ハムの予告先発はアーリン。佐藤輝が大ファンと公言する「ももいろクローバーZ」のメンバー、佐々木彩夏の愛称も「あーりん」だ。この日三振を喫したリリーフの玉井は、同じくメンバーの玉井詩織と同姓。夢の「ももクロリレー」が実現すれば…。打つしかないZ!

▼佐藤輝は交流戦で11打点。過去の新人の交流戦での最多打点は19年中川圭太(オリックス)12打点。佐藤輝はあと1に迫った。

▼佐藤輝が2安打を放ち、シーズン通算17度目のマルチ安打を記録した。143試合換算なら43度となる。阪神新人最多の19年近本43度と並ぶハイペースだ。なおセ・リーグ新人最多は58年長嶋茂雄(巨人)48度。プロ野球新人最多は56年佐々木信也(高橋)54度。