侍の金棒が輝いた。楽天浅村栄斗内野手(30)が3安打3打点の活躍でチームを2連勝&2位浮上に導いた。

3回無死三塁、ソフトバンク石川の内角高め直球に腕をたたみ、左翼席へ自身28試合ぶりの1発となる5号先制2ラン。16日の東京五輪侍ジャパン内定後は、6試合で20打数9安打、打率4割5分、1本塁打、6打点と絶好調。「自分のバットで勝ちにつなげることが今年はほとんどできていなかった。脇役から今日は久しぶりに主役になれたんじゃないかな」と充実感を漂わせた。

日本の主軸であっても、無意識に意識してしまう。今季72試合目でアーチは5本目。32本塁打で自身初の本塁打王に立った昨季は同試合時点で21本を放っていた。「意識してないと言っても1年間、最低限これくらい、というのはある」と毎打席、電光掲示板に映る1桁の数字に違和感はぬぐえない。

もどかしさは試行錯誤で和らげる。日によってバットの重さを10グラム単位で変える。最大で880グラム。ヘッドの出が悪い時は重量を上げて重みを感じたり、「ただ単に軽いので打ちたい時もあります」と練習で体の状態、バットの感触を確かめてから決める。「打席に入って全ての球にホームランを狙うことは全くない。自分のスイングをしてきた中で角度がつけばホームランになると思って今までも、今もずっとやっている」と軸はぶらさない。

五輪まで1カ月を切った。ただ優先順位はきっちりとつけている。「代表合宿が始まって打撃を見直す期間もある。今はチームのことしか考えていない。そのいい状態でジャパンの方にいければ最高。その期間が来るまでは自分、チームのことをしっかり考えてやっていきたい」。二兎(にと)は追わない。目の前の敵を倒すために、一心不乱に金棒を振る。【桑原幹久】