今季のプロ野球をにわかに賑わせている選手たちがいる。 山賊打線の一角を担う西武愛斗外野手は前半戦で8本塁打を放った。日本ハム3年目の野村佑希内野手は三塁のレギュラーに定着し、広島高橋昂也投手は先発を託される。現在、同校は歴代2位タイの6年連続でドラフト指名を受けた選手を排出している。プロで活躍する花咲徳栄の指導法に迫る。

【前編・花咲徳栄OBが木製バットに対応できる極意】はこちら>>

 ◇ ◇ ◇ ◇

技術だけでなく、高校時代からの「自立」がプロの世界へつながっている。「ベースを教えて、後は自分で考えてやらないとダメだよということを取り入れ始めてから、高卒でプロがたくさん出始めた」と感じている。

監督の指示通りに動いていれば勝てる、と言われていた時代もあった。「若い頃は、そういう言葉を聞くと自分も酔っていた。でも甲子園で勝てないと思った時に、いろいろ考えると、もう(監督の)言っている通りやっていたら勝てないだろうと思い始めた。だから、自分で考えないとダメだよという方向にいった」と言う。

プロ入り後、コーチの指導を受けながらも最終的にコンディションと向き合い、調整するのは自分しかいない。形を作り上げていくのは、自分だ。「花咲徳栄の子は、手間がかからない、と(球団から)言われたいという思いはあります」。

高校3年を迎えた段階で「プロ野球選手になりたいです」という選手に、必ず話すことがある。プロ野球選手とは、どういう職業か。〝ドラフト候補〟となれば報道も増え、スカウトも視察に訪れる。「車を1、2時間運転して、電車乗り継いで球場に来てくれる。大会があれば来てくれる、それについてどう思うか?」。

プロ野球選手とは、大人になるということ。あいさつも「おはようございます」ではなく、「遠いところ、ありがとうございます」「お忙しいところ、ありがとうございます」であるべきという教えだ。

人として、野球人として、社会人としての基本。「プロ野球というのは親会社があって、長年のファンの方がいて首脳陣、スタッフ、裏方さんがいる。18歳の小僧に何千万円も払ってくれるということに、どうやって恩返しをするか」。この話を聞いた選手は、日頃の取り組みから変わるという。

プロ野球選手を送り出すだけでなく、その先の道まで考える。そこに、花咲徳栄流プロ野球選手育成のための「英才教育」メソッドがあった。【保坂恭子】