中日の輝く星になる。上武大・ブライト健太外野手(4年=葛飾野)は中日に1位で指名された。

ガーナ人の父を持ち、引き継いだDNAは未知数。レギュラーに定着したのは4年になってから。今春の大学野球選手権では2本の本塁打を放つなど、右の強打者に成長した。まだまだ未完の大器。並外れた身体能力と、長打力を武器に、その名の通り、光輝く。

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ブライトは中日に指名が決まった瞬間、小さく一礼すると、周囲からの拍手が沸き起こり、ようやく笑みがこぼれた。「すごくうれしく思います。実力ではまだまだまだ。しっかりと地に足をつけて、1日1日を大切に過ごしたい」と、丁寧に言葉を選んだ。

未完の大器がプロの世界へ歩き出す。「まさか自分が1位だとは思わなかった」と戸惑いの表情を浮かべた。大学入学時は、今この光景を全く予想していなかったからだ。ただ、思い出されるのは谷口英規監督(52)の言葉。「頑張ればプロになれるぞ」。ケタ違いの身体能力。一から野球を学び、高い身体能力を技術に生かすすべを学び長打力を身に付けた。

初めて自分の人生に誇りを持てた。「僕はエリート人生を送っていない。でも間違いじゃなかった。誇りに思います」と胸を張った。高校までは無名の選手。小1から6年間、柔道で日本の武道を学び体を鍛えた。中学では「メジャーでもっと難しく厳しいスポーツを」と野球を選んだ。「当たればホームラン。難しいけど僕の力を発揮できる」と、メジャーリーガーの動画を手当たり次第にチェックしてはまねをした。高校通算本塁打は38本。野球が楽しくなった。「本格的に野球をやりたい」と上武大の門をたたいた。

『覚悟』を決めた秋がある。大学入学後、初めての寮生活に厳しい練習。「もうやめよう」。1年の9月、朝4時。荷物をまとめ、寮を脱走。実家に帰った。同日午後、同級生4人が迎えに来てくれた。「将来、お前が4番を打つんだ。一緒に帰ろう」。涙があふれた。「ここでやめたら後悔する」。『覚悟』を決め取り組んだ。「苦しい時期を乗り越えて人は強くなる」。今でも友に感謝する。

まだ発展途上の選手だ。「将来はタイトルを取れる選手なりたい」。力強く、今その1歩を踏み出した。【保坂淑子】

▽中日米村アマスカウトチーフ 会議で出した1位から6位が変更なく指名できた。100点満点のドラフトで感動している。(大学生野手3人には)今季は本塁打が少なかったので、しっかり本塁打が打てる打者に育ってほしい。