強靱(きょうじん)な心と体で、阪神伊藤将司投手(25)が今季9勝目を手にした。「立ち上がりから自分の中でも調子がいいと分かったので、行けるところまでしっかり投げようという気持ちでした」。4回まで完全投球と圧倒し、7回4安打無失点。7回無死一塁で4番鈴木誠を遊ゴロ併殺に仕留めるなど、主軸にも強いハートで立ち向かった。

痛いアクシデントにも動じない。1-0の7回2死。坂倉の強烈なライナーが左臀部(でんぶ)を直撃し、顔をゆがめてもん絶した。いったんベンチに下がったが、球場がざわつく中すぐにマウンドへ。「ここまで来たら気合だと思ったんで。あとは根性で投げました」。迎えた菊池涼をチェンジアップで三ゴロ。お立ち台では、直撃した場面について聞かれ「あ、大丈夫でした」とケロリと答えた。4回にも一塁ベースカバーに入り、マルテの送球を「素手キャッチ」。最後まで体を張って0を並べた。

阪神の新人左腕では67年江夏の12勝以来、54年ぶりの9勝目。規定投球回にはわずかに届かないが、防御率は“隠れ2位”で、10月は0・82と抜群の安定感を見せている。開幕からフル回転を続けてきたルーキーは、まだまだ元気に腕を振る。【磯綾乃】

▽阪神矢野監督 本当にルーキーですけど、経験豊富なピッチャーなんで。本当に助かっている。(打球直撃は)それは大丈夫。お尻の肉のある部分だから。