オリックスが今季最終戦で奪首した。エース山本由伸投手(23)が楽天を4安打完封し、球団記録を更新する15連勝で18勝目(5敗)を挙げた。2種類のフォークを操って初の200奪三振もクリア。チームは貯金15で、山本は1人で貯金13を稼ぎ2年連続最下位のチームを押し上げた。25年ぶり優勝の行方は27日以降に3試合を残す2位ロッテの結果次第。人事は尽くした。天命を待つ-。

寒空の仙台で、山本は全力で腕を振った。「とにかく必死。1試合の重要さを十分に理解したマウンドでした」。悲願のVへ、負けられない最終戦。9回4安打無失点と至高のピッチングで期待に応えた。「高山投手コーチが『1人にさせないから』と言ってくれた」。紅林が、後藤が、バックが好守で助けてくれた。「8回が終わった最後も『決着をつけてこい』と」。覚悟を決めて臨んだ一戦。力強い仲間とともに15連勝での18勝目を、今季4度目の完封で飾った。

高卒5年目で初めてシーズンを走り抜いた。故障なく、最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振、最多完封と、投手5部門のタイトルを総なめ。支えたのは磨いた直球と“握らないフォーク”だった。

初回。先頭の山崎剛を146キロフォークで空を切らせ、初の200奪三振に到達。空振りを奪うフォークは見よう見まねでモノにした。投手を始めた宮崎・都城高1年。紅白戦の左打席で“打者目線”で覚えた。「1歳上の先輩が『ツーシーム』と言って投げていたんです。でも、落差がすごかった」。打席を離れると即座に教えを請い習得。探求心がエースへの道を切り開いた。

改良を重ねた。「カウントを取るのと、三振を狙う2種類のフォーク。(捕手の)サインは1つなんですけどね」。ボールは2本指で挟まず「握ってないんですよ」と縫い目に添えるだけ。そして、1球1球に愛情を込める。球審から新しいボールを受け取ると、ふうっと息を吹き、両手でギュッと白球をこねる。「触った感じがパサパサから、しっとりに変わるように」。この日の122球も優しくなで、味方にした。

シーズン最終戦で首位奪回。貯金15でペナントレースを終えた。最短Vは27日。2位ロッテの3試合の結果を待つ。中嶋監督は「全然もう、負けてくれとか思えない。良い勝負をできたなと思う」と充実の表情で言った。そして「その先もあります」とポストシーズンを見据えた。歓喜か、悲運か-。全員で喜ぶために、全員が、最善を尽くした。【真柴健】

▼山本はすでに確定していた最多勝利に加え、最優秀防御率、最高勝率も確定。最多奪三振、最多完封も確実にしており、この5部門でトップに立つ「投手5冠」は06年斉藤和巳(ソフトバンク)以来8人目。球団では勝利、防御率、奪三振の3冠だけでも初めてになる。