慶大が3点差を追いついて引き分けに持ち込み、今春に続く通算39度目の優勝を決めた。堀井哲也監督(59)は「本当に選手が頑張ってくれて、ほっとしているのが正直な気持ち。(選手には)泣いても笑っても最後の試合。いいゲームをしようと話をした」と振り返った。インタビューの途中では声を詰まらせ「本当によくやってくれたと思います」と選手たちをねぎらった。

春秋連覇は、主将の“喝”から始まった。今春はリーグ優勝に続き、6月の全日本大学選手権でも優勝。34年ぶりの日本一まで上り詰めた。だが、栄冠の後、福井章吾主将(4年=大阪桐蔭)は部内の空気が微妙に緩み始めたのを見逃さなかった。グラウンド周りに、それまでは落ちているはずのなかったゴミが落ちていたり、寮のスリッパが乱れていたり…。このままでは、いけない。ミーティングで呼びかけた。

「春と秋は別物。春の山を1度下りて、秋、もう1度、山に登ろう」

広い視野でチーム全体を見渡し、強いリーダーシップで引っ張っていく。堀井監督が「今すぐに監督になってもいいぐらい」と全幅の信頼を置く主将の言葉が、再びチームを引き締めた。福井はこう振り返る。

「日本一になったことで、求められるハードルが高くなりました。秋に向けて再スタートする中で、もう1度日本一に、と考えると、難しくなっていました」

前日の1回戦で今季9試合目にして初めて敗れ、早大に逆王手をかけられた。負けられない一戦を乗り越え、天皇杯を手にした。主将を中心に全員で足元から見つめ直したことで、慶大として91年以来、30年ぶりとなる春秋連覇を達成した。最後の目標は、明治神宮大会(11月20日)。春に続く「日本一」の山に登る。【古川真弥】