オリックスが「ラオウ」の1発で日本シリーズ進出に王手をかけた。パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第2戦。本塁打王の4番杉本裕太郎外野手(30)が6回にロッテ東妻から先制2ランを放った。これが決勝点となり、チームはリーグ優勝による1勝のアドバンテージを加えて3勝0敗。過去無傷の王手は18チーム全てがCSを突破しており、確率は100%。12日の第3戦で勝つか引き分ければ25年ぶりの日本シリーズ進出が決まる。

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ラオウ杉本が“まさか”のひと言で決勝2ランをぶち込んだ。6回2死一塁。ロッテ2番手東妻が投球練習をしていると、スタスタと藤田通訳が次打者ボックスに歩み寄ってきた。

「不意です。横にいたラベロにアドバイスかなと思ったら通り越して…。日本語で『クイックが早いから気を付けろよ』と言われたんです(笑い)。あ、僕に? みたいな」

打席に向かう途中に助言を「再確認できた」という。「藤田さんのアドバイスで上手にタイミングが取れた。改めて周りの人に感謝したい」。今季を物語るような一体感。初球の真ん中133キロスライダーを捉えて左翼席に放り込んだ。

悔しさを胸にバットを握った。CSファイナル初戦は無安打。「大舞台で力んでしまう僕の悪い癖が出た」。大振りを修正するため試合前に室内で打ち込んだ。シーズン中は中嶋監督に指示されて行うが、今回は「昨日の夜に室内で打ちます」と予約していた。室内はグラウンドの景色が見えないため「コンパクトに軽く振るイメージに」。2打席連続安打で迎えた6回に豪快なアーチ。今季の本塁打王は32発中13発がロッテから。好相性は健在だった。自身初のタイトル獲得には「過去のこと。全然関係ない。ここからは1試合が大切になる」と流し、目の前に集中できている。

ダイヤモンド1周後はお決まりの「昇天ポーズ」を青学大の後輩、吉田正と決めた。右手首骨折から驚異の回復を見せ、本塁打の前には投手強襲打を放っていた。そんな後輩を「まだ完璧に治っているかどうか知らないですけど、100%ではないと思う。その中でも頑張って試合に出ている」と思いやった。

12日に引き分け以上で日本シリーズ進出が決まる。リーグ優勝時、吉田正へつづった愛のレターの最後は「一緒に日本一になろうな!」。ラオウのひと振りが歓喜をグッと近づける。【真柴健】

▽オリックス藤田通訳(杉本に助言)「もちろん監督からの指示です。次がラベロだったから(隣にいた)スギにも伝えました。ラベロはあれって顔をしていましたね」