“日本シリーズの鬼”の采配が、2連勝を引き寄せた。

ヤクルト高津臣吾監督(52)は、「SMBC日本シリーズ2021」第3戦の同点の7回から、継投策へ。2死満塁から4番手石山をイニングまたぎで起用し、1点差の9回は、第1戦でサヨナラ負けを喫した守護神スコット・マクガフ投手(32)がリベンジ。日本シリーズ記録の8セーブ、4度の胴上げ投手となった指揮官のタクトで、対戦成績を2勝1敗とした。

    ◇    ◇    ◇

笑顔の高津監督は、がっちりマクガフと抱き合った。第1戦でサヨナラ負けを喫した守護神を、9回1点差の場面でマウンドへ送り出した。2死一、三塁のピンチを切り抜けて勝利。現役時代に守護神を務め、しんどさは誰より知る。「初戦にやられたことはおそらく、頭の中から離れることは絶対ないと思う。ただ、こうやってまた勝ちに導く投球を9回にしてくれたのは、我々の明日の元気になる」。チームにとって、監督にとって、大きな1勝となった。

サヨナラ負けした翌日、第2戦の試合前練習中に指揮官はマクガフに歩み寄り、声をかけた。「僕は全く気にしてないよ」。マクガフは「ありがとう」とサムズアップポーズ。悔しさを一緒に乗り越えた指揮官と選手の絆は、さらに深まっていた。

現役時代には、日本シリーズを4度経験。計11試合に登板し無失点を誇る“日本シリーズの鬼”の出し惜しみをしない継投策が、光った。同点の7回から今シリーズ初登板となる2番手スアレス、3番手田口へ。1点は失ったが、さらに2死満塁で代打ジョーンズがコールされると、すかさず石山へスイッチした。

低めフォークで空振り三振。ピンチを脱すると、「打ち取り方がすごくよかったので、8回もいかせようと思った」と勝利の方程式・清水ではなく、石山を続投させて逃げ切った。高津監督は「ゲームをつくった小川もよく粘った。その後リリーフしたスコット(マクガフ)まで、みんなよく頑張ったと思います」と起用に応えた選手をねぎらった。短期決戦をよく知る指揮官の采配が、日本一への道筋をつくる。【保坂恭子】