ベテランの快投で、ヤクルトが日本一へ王手をかけた。「SMBC日本シリーズ2021」第4戦は、石川雅規投手(41)が6回3安打1失点(自責0)の好投。

プロ20年目での日本シリーズ初勝利は、50年の毎日若林以来、実に71年ぶりの40代投手勝利となった。3勝1敗とした高津監督は25日が53歳の誕生日。特別な日に、ホームで日本一を決める。

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勝利の瞬間、ベンチから身を乗り出して見ていた石川は何度も拳を握りしめた。20年ぶりの日本一へ王手をかけたのは、現役最多177勝の左腕。「日本シリーズにくるまで長かったですし、勝つことができたのも、自分自身に『よかったね』と言ってあげたいというか、うれしいです」。6年前は2戦2敗。やっと自分で自分を褒められる、日本シリーズ初白星だ。

初回をしのいで波に乗った。1死一塁で、吉田正を内角低め121キロチェンジアップで空振り三振。続く杉本も外角低め変化球で中飛。青学大の後輩2人に対し、丁寧に低めを突いた。2~5回は無安打に抑え「日本シリーズの雰囲気や、相手打者との対戦を思い切り楽しめたのかなと思う」。第1戦の奥川から高橋、小川と全4戦で先発投手がクオリティースタート(6回以上、自責3以内)を達成。接戦を制した。

変化球でかわすのではなく、直球勝負にこだわった。伊藤投手コーチの指導もあり、130キロ台の直球を見せることでより多彩な変化球がいきるようになった。「130キロですけど、打者がどう感じるかが大事だと思って20年やってきたので、持ち味を十二分に出せたのかなと思う。勝ったので100点です」。

日本シリーズでのセ・リーグ最年長勝利投手という輝かしい肩書が加わった。「まだまだルーキーの気持ち」と笑う半面、覚悟がある。マウンドに上がれば、大ケガをするリスクは付きもの。「毎回、これが最後と思って投げている」。腹をくくって腕を振るからこそ、白星がついてくる。

プロ初勝利を挙げた後輩には、試合の日付と名前を文字盤の裏に刻んだ時計を贈るなど、心配りを欠かさないベテラン。チームスワローズの雰囲気は、最年長の石川による部分も大きい。「チームとして9回27個のアウトをいかに取って、いかに相手より点を多く取るかという野球がスワローズ。そういう戦いをして、東京で決めたい」。日本一は、もう目の前だ。【保坂恭子】

▼41歳10カ月の石川雅規投手が6回1失点でシリーズ初勝利。 シリーズで40代投手の登板は16年<3>戦黒田(広島)以来7人目。白星を挙げたのは第1回シリーズの50年<1>戦で延長12回を完投した若林(毎日=42歳8カ月)以来、71年ぶり2人目。セ・リーグの40代投手では初めて。石川は5三振を奪い、06年<2>戦山本昌(中日)の3個を上回る40代投手の最多奪三振だ。 また、この日のオリックス先発は23歳5カ月の山崎颯。18歳5カ月差の先発対決は、10年<4>戦の山本昌-唐川(ロッテ)の23歳11カ月に次いで2番目の年齢差だった。

▽ヤクルト高津監督(石川について)「大きな舞台で本当に彼らしい投球をやってくれた。相手打者というより自分中心の投球を心掛けたのかなと感じる。彼はそんなに表情や体に出したりはしないが、しっかり強い気持ちの部分というのを持ってマウンドに上がってくれた」

▽ヤクルト中村(石川を好リードし)「今季、石川さんが悔しい思いをしたと思いますし、CSファイナルも投げずに期するものがあったと思う。自分もなんとかしたいと思ってリードした。シーズンと変わらず、オリックス打線を意識せず、打者打者になりすぎず、1年間やってきたこと、投手の一番いいところを引き出そうと研究している」

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