日刊スポーツ評論家陣が提言する「背水矢野虎 来季Vへの具体的方法論」。阪急で通算284勝、元中日監督の山田久志氏(73)は目先にとらわれない確固たるチーム作りを提言した。

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今年もまたコロナ禍続きのイレギュラーなシーズンだった。勝ち数が上回っただけで優勝できるものではなかったし、その時、その時に、うまく戦ったチームが勝ち抜いた。それが終盤の勝負どころでチーム力がずぬけたヤクルトだったということだろう。個々の力を考えれば巨人が上だが、あれだけ故障者続出、好不調の波が激しいと勝てない。

巨人に比べると、阪神での故障は西勇の離脱ぐらいで、チームは開幕から飛ばしたのに失速した。伊藤将、佐藤輝、中野の新人が戦力になっていなかったらここまでは戦えなかった。

結局、突き詰めると投打に戦力層が薄かったと言わざるを得ない。外国人補強は手っ取り早い。でもそろそろ助っ人に大きな期待をかけるのはやめたほうがいい。阪神はそのシーズンに勝てばいいといったチーム作りに見えてしまう。そのチーム体質を変えないと、来シーズンも勝てないし、常勝チームなんてとんでもない。

投手も、野手も、もう一段階レベルを上げないといけない。青柳、ガンケルも終盤は慣れられてきたから、先発は8人そろえたいし、7、8回に投げる人材も必要だろう。

阪神で気になっているのは、力量的に可能性を感じる投手をすぐにリリーフにもっていってしまうことだ。若手の及川、小川らがそうで、どういった見極めをしているのかがわからない。他球団では、宮城、戸郷、奥川らが先発として育っているように、ちゃんとしたピッチャーの見極め、育ってないのか、育てられないのか、そこはチェックしながら手を打たないといけないだろう。

若手の伸ばし方も、この1年に勝てばいいという姿勢に見えてしまうところだ。大山、佐藤輝、中野を底上げできるか。俊足、守備力の高いスペシャリストは何人もいらない。終盤にプレッシャーをかけることのできる代打は必要だ。

来シーズンに向けて、今年のように9回打ち切りでないことを前提とし、シーズンを戦い抜く投打の戦力整備、確固たるチーム作りをしたい。【取材・構成=寺尾博和編集委員】