燃えさかる炎を前に正妻再奪回を誓った。広島会沢翼捕手(33)が9日、堂林翔太内野手(30)とともに鹿児島市内の最福寺で6年連続6度目の護摩行に臨んだ。昨季は下半身の2度の負傷に悩み、出場試合数を伸ばせなかった。16年目の今季は全試合スタメンを目標に掲げる背番号27。高さ最大3メートルにもおよぶ火柱を前にしても1歩も引かない姿勢で、この1年にかける思いの大きさを示した。

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赤い火柱が眼前にそびえ立つ。時折舞う火の粉が足に付着し、衣服を焦がした。それでも会沢は激しい炎から身を引くことなく、お経を唱え続けた。「何年やっても苦しい。また新たにやってやるんだという気持ち。(21年は)悔しい思いをしているので、悔しい思いを晴らす思いで」と決意を新たにした。

4年連続開幕マスクで迎えた昨季は5月上旬に下半身のコンディション不良で、6月中旬には左脚の負傷で2度の2軍落ち。先発マスクは10歳下の坂倉が53試合に対して、会沢は47試合にとどまった。「切磋琢磨(せっさたくま)してやっていければ」。若手の台頭に負けじと、その座を奪い返す意気込みで16年目のシーズンに向かう。

護摩行を行った最福寺・池口恵観宿老(85)は「会沢君も今年は頑張ると思う。あの意気でやってもらえたら強いと思う。今年はいいのではないでしょうか」と活躍に太鼓判を押した。さらに会沢には「雲外蒼天」と四字熟語を送った。池口宿老いわく「前途に雲が垂れ込めていたとしても、その先には蒼い(青い)空が広がっている」との思いを込めたという。

チャンピオンフラッグ獲得こそが背番号27にとっての“青空”だ。今季の目標を初の全試合スタメン出場とした上で「チームがずっと悔しい思いをしているし、みんなの口から『悔しい』と出ている。チームのために、一丸となって優勝に向かいたい」。16~18年はV3を経験。17、18年はベストナイン捕手として頂点へチームをけん引した。「佐々岡監督を胴上げできるようにやっていくだけ。自分に負けない気持ちを忘れずに、1年間やっていきたい」。正捕手奪回、そして4年ぶりの優勝へ-。巨大な火炎を前に、誓いを立てた。【前山慎治】

◆護摩行 インド伝来で密教最高の修行法。燃え上がる炎の前で、全身全霊を込めて不動真言を唱え祈りをささげる。全ての煩悩を焼き尽くすという意味がある。鹿児島市内の最福寺での護摩行は、広島球団では金本知憲氏が発祥。その後新井貴浩氏、石原慶幸氏、小窪哲也氏などが行ってきた。現役選手では会沢、堂林らが行うことが恒例となっている。