阪神V戦士で日刊スポーツ評論家の今岡真訪氏(47)と鳥谷敬氏(40)が、25日のペナントレース開幕を前に特別対談し、矢野阪神の22年シーズンを占った。第1弾の「投手&守備編」では、藤浪晋太郎投手(27)の復活がカギを握るという意見で一致。青柳の代役で開幕投手に指名された右腕を1年間使い続けるべきだと、ともに力説した。あす23日の「打撃編」と2回に分けてお届けします。【寺尾博和編集委員、酒井俊作、佐井陽介】

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鳥谷氏 阪神の先発陣は計算できる投手が多いと思います。一番のポイントは抑えが抜けたところ。そこにつなぐという意味では、先発が7、8回を投げてくれると助かりますね。あとは岩崎投手が抑えなのかセットアッパーなのかは分かりませんが、たとえば守護神を出せない同点の9回に投入される投手が重要になってくると思います。甲子園は点がなかなか入らない。僅差で負けている場面などで投げる若手投手が、昨年と同じような活躍ができるかにも注目しています。

今岡氏 現状で中継ぎ陣はなかなか名前が出てこない。おそらく岩崎とケラー以外はシーズンを戦いながら整えていく発想だと思います。開幕メンバーの中で、勝ちパターンが誰々とは決めていないだろうし、決められないと思う。先発は頭数がいますが、中継ぎ陣は始まってから整えていく形になると思います。

鳥谷氏 先発は藤浪投手が1人入るだけで違うと思います。勝ち負けに関係なく球数、イニングを投げられるので。そういう投手が先発で1年間回ってくれると助かる。今年は9回打ち切りから12回制に戻るので、先発がイニングを投げてくれることが重要になる。藤浪投手のような先発が年間を通して投げてくれたら、チーム力としてはかなり良いんじゃないかと思います。

今岡氏 藤浪の場合、勝敗に関係なくローテーションで回すべきですね。ロッテにいた4シーズンはあまり見ていないが、藤浪には数字以上の存在感がある。それが彼の力を出す邪魔になっているし、魅力でもある。

鳥谷氏 昨年までの藤浪投手はストライクボールがはっきりしていて、自滅というかコントロールに苦しんでの敗戦が多かった。送り出す方は不安もあると思うんですけど、打者目線で言えば、打席で一番嫌な投手はコントロールが安定していない投手なんです。ここら辺に必ず来るからと踏み込んでいけないので。自分が阪神に所属していた時は藤浪投手がヤクルト戦で投げる時、山田選手やバレンティン選手は試合に出なかった。その日の戦力がダウンしても翌日への影響を避ける策を取るぐらいの投手であることも、魅力の1つだと思います。今年の開幕カードもヤクルト戦。主力に右打者が多いチームですから、ヤクルト側は嫌だと思いますよ。

今岡氏 タイガースが優勝できるかどうかは、藤浪にかかっているというとらえ方はできるかもしれません。彼をどう生かすか。成績だけを物差しにすると、仮に結果が出なければ、去年のように「2軍に行きなさい」ということになってしまうかもしれない。ただ、今年は調子が落ちたり、何かあった時でも昨年とは違うマネジメントをしてほしい。本人は自分の能力を出すことに専念しているわけで、あとはチームとして、彼をどうコントロールするかだと思います。

鳥谷氏 周りが求めている姿は、まとまっていてストライクも取れる藤浪投手かもしれない。でも、打者からしたら常に構えたところに投げられるよりも、たまに抜けたりする投手の方が嫌なので。広島や大リーグで活躍された黒田博樹さんは、投球練習の時にわざと大きく抜けたように見えるボールを1球投げたりしていたらしいです。そういう球もあると、打者に印象づける意味があったという話をされたりしていました。それを意図的にできる投手がいれば、そうなる投手もいる。藤浪投手が投げる1試合だけを見れば負けもあるかもしれないけど、2試合目、3試合目に打てなくすることもできる投手。球数を投げる体力はある。そういう意味でも、年間を通して投げてほしい投手ですね。

今岡氏 勝ちパターンの投手は、今年はまだ誰が出てくるか分からない。岩崎、ケラー以外は調子が良い順に、いつも元気なピッチャーを投入するという考えもあります。

鳥谷氏 ケラー投手の話でいえば、まだどれだけ実力があるのか判断できません。ただ、一般論で言えば、環境が変わった来日1年目から抑えでフル回転できた投手は今まであまり見たことがないんですよね。中日のマルティネス投手もヤクルトのマクガフ投手も巨人のビエイラ投手も1、2年やって出てきた投手たちです。もちろんケラー投手が最初からハマればいいですけど、それがなかなか難しいから、岩崎投手を抑えにするかどうかという議論も出てくるのでしょうね。ただ、岩崎投手は7、8回でたとえば左打者が3人並んでいて右投手で行きたくない時も行けるし、右打者が3人並んでいてもいける。使い勝手がいいので、抑えではなくセットアッパーの方がいいのかなという思いはあります。シーズン序盤は打順の流れを見ながらケラー投手が行ったり、岩崎投手が行ったりして適性を見ていく形になると思うんですけど、12回制を考えたら藤浪投手の抑えも選択肢の1つかなとは思います。同点の場面で2、3イニングを投げられるメリットもありますし。

今岡氏 抑えはスアレスが抜け、獲得したケラーはそこにはめるために獲得したわけで、来日が遅れたからこういう議論にもなりますが、本来、答えは出てますよね。ただ中継ぎ陣に関しては、調子の良いピッチャーをはめていきながら夏を越していく戦い方しかできないと思います。現時点で勝ちパターンの投手は、岩崎しか名前が挙がらないですよね。オープン戦で試した投手をはめながら徐々に形にしていくのだと思います。それと藤浪の抑えに関しては選択肢の1つでしょうが、藤浪が抑えをしているということは、何かイレギュラーなことが起きて第2のマネジメントが発生しているということ。現段階では「先発藤浪で復活」のストーリーなのでしょうね。あとは守備力の改善策について、どう思う?

鳥谷氏 一番は守備位置の固定ですよね。自分がショートの場合、セカンドの選手によって、併殺にしても正面に送球した方が一塁へ投げやすい人もいれば、正面からちょっとズレた方が投げやすい人もいる。その連係1つがワンテンポ遅れて、併殺が取れないこともあります。連係に関しては、同じコンビでやればやるほど確率は上げていけるし、エラーも減らせると思います。打順にはめてから守備位置を考える形で行くと、いろんなバリエーションになると思いますけど。やっぱり守備位置を固定されている選手のエラーが一番少なくなるものなので。どのポジションもできる選手でも、必ず得意不得意はある。急に技術力が上がることは難しいので、守備力だけを考えるのであれば、得意なポジションを守らせるのもありかなと思います。エラーや守備力だけを考えるなら、ポジションを固定すれば確率は上がると思います。

今岡氏 いつも思うのは控え選手の守備力についてセ・リーグは特に代打、代走から守備固めがある。守備固めが固められていない。今は外野を守っていた選手が試合終盤に内野へ移る時もある。外野と内野では当然動きも違うし、それで守備固めというのはちょっと違うのではないか。かつては、ゴールデングラブ賞も獲得している中日の渡辺博幸さんが、タイロン・ウッズら外国人選手の後に一塁を守ったりもしていましたが、そういう形が本当の守備固め。組織全体のことを考えたら、なかなか難しいことですが、サブメンバーの仕事をはっきりさせることは大事だと思います。(明日の打撃編に続く)

◆近年の藤浪 大阪桐蔭から12年ドラフト1位で阪神に入団。1年目に10勝を挙げるなど3年間で35勝をマークした。だが17年の7勝を境に成績は低迷。制球に苦しみ、19年は1軍登板1試合で、20年からは救援登板も増えた。昨年は初の開幕投手も託されたが3勝止まり。オフは巨人菅野との合同自主トレに参加して右膝の使い方を学び、今春キャンプ、オープン戦の好調につなげ、開幕ローテを当確させた。コロナ感染した青柳に代わり、2年連続開幕投手に指名された。

◆今岡氏、鳥谷氏と藤浪 今岡氏と鳥谷氏は04~09年に阪神でチームメート。05年は三遊間でコンビを組み、今岡氏は5番で147打点を挙げてタイトルを獲得。鳥谷氏は初の全146試合出場で遊撃の定位置を固め、岡田阪神優勝の立役者に。ともに阪神にドラフト最上位で入団し、ロッテで現役を終えた。昨季は今岡ヘッド、現役鳥谷の関係で2位に貢献した。また、今岡氏は引退後の16~17年に阪神2軍コーチを務め、初めて藤浪と共闘。鳥谷氏と藤浪は13~19年に阪神でプレー。今春のキャンプで対談した鳥谷氏は右腕の復活を確信し、15勝&200イニングを期待した。