巨人の成り上がり右腕・2年目の戸田懐生投手(21)が、プロ初勝利をつかんだ。先発山崎伊の後を受け、1点リードの4回2死一、二塁のピンチで登板。阪神糸井を三ゴロに仕留めた。5回も抑えて、1回1/3を無失点。救援陣がリードを守り切り、初のお立ち台に上がった。東海大菅生(西東京)を中退し、一時は野球を離れた。開幕から7勝1敗、5連勝で単独首位に浮上したチームに若き力が融合している。

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チャンスを逃すわけにはいかなかった。戸田が持ち前の強気な投球で、阪神糸井に向かった。今季2度目のマウンドは、1点リードの4回2死一、二塁のピンチ。「なかなかチャンスも少なかった。ここでやるしかない」と燃えた。2球目、内角スライダーで詰まらせた。三ゴロで切り抜けガッツポーズ。5回も無失点で抑えると、先輩リリーバーたちが初勝利を届けてくれた。

はい上がって、ようやくたどり着いた。甲子園4強入りした東海大菅生を右肘の故障などの影響で中退。地元・愛知に帰り、いったんは野球から離れたが、諦めきれなかった。数カ月後、中学時代に所属した愛知衣浦リトルシニアの島田圭一監督(54)のもとを訪れ、グラウンドを使わせてもらえないか頼んだ。「高卒資格を取ったら話を聞こう」。突き放された。

半年間、練習はランニングなどの軽い運動のみで勉強に励んだ。屋久島おおぞら高の名古屋キャンパスで高卒資格を取得。セレクションを実施してくれた独立リーグの四国IL・徳島で再出発することを決めた。「(高校を)最後までやり切れず、すみませんでした」。18年秋、もう1度恩師を訪れ号泣する戸田に、島田監督は「どれだけ強く怒っても全然泣きもせんかったやつが、わんわん泣いて謝りにきた。『じゃあ徳島に行くまで、体を作っていきな。話は終わり』ってね」と、がっちり握手した。

浴びた脚光から一転、「野球ができない時が一番つらかった」と暗闇も味わった。プロ入りは育成ドラフト7位。踏ん張って、食らい付いて、初のお立ち台まで来た。「2年目の戸田懐生です! 任されたところで1球1球、全力で投げたいと思います!」と声を張った。マウンドこそ、一番輝ける場所だ。【小早川宗一郎】

◆戸田懐生(とだ・なつき)2000年(平12)7月22日、愛知・高浜市生まれ。東海大菅生時代の2年夏には甲子園に出場し、同校初のベスト4入りに貢献した。同校中退後は屋久島おおぞら高、四国IL・徳島を経て20年育成ドラフト7位で入団。昨年6月に支配下登録をつかんだ。170センチ、73キロ。右投げ右打ち。

 

▼巨人2番手の戸田がプロ通算5試合目の登板で初勝利。戸田は20年育成ドラフト7位で四国アイランドリーグplus徳島から入団。育成ドラフト出身で勝ったのは、3月31日のソフトバンク大関に次いで26人目。巨人では山口鉄也、星野真澄、土田瑞起、篠原慎平に次いで5人目。育成ドラフト指名順位の7位は、全球団を通じ勝利投手の中で最も下位。これまではロッテ西野の5位が最も低い順位だった。

 

▽愛知衣浦リトルシニア・島田監督「初勝利おめでとう。周りの人に感謝して、大事な場面を任される存在になってください」