ソフトバンク田上奏大投手(19)がデビュー戦を堂々の投球で飾った。3年ぶりの長崎開催となったロッテ4回戦でプロ初登板初先発し、5回2/3を2安打無失点。初回には自己最速を1キロ更新する155キロをマークした。外野手から投手に転向して約2年。昨秋は育成契約を結び、試合の5日前に再び支配下登録された。勝敗はつかなかったが、若き苦労人が飛躍への第1歩を刻んだ。

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【ニッカン式スコア】12日のソフトバンク-ロッテ戦詳細スコア

19歳の田上は、堂々とマウンドに立った。1回。1番高部への1球目に153キロを計測。球場がどよめいた。その後1死二塁となり、3番中村奨への1球目に155キロ。自己最速を1キロ更新した。プロ初登板の高卒2年目右腕に、誰もがくぎ付けになった。

「初回が一番緊張したし苦しい投球でした。2回以降は思い切って攻めることができたし、楽しんで投げることができました」

20年ドラフト5位で入団も、1年目の昨オフに成長に時間を要するという球団の見立てから育成契約。しかし今年4月7日に支配下登録をつかんだ。履正社(大阪)3年春に投手転向し、公式戦登板はゼロ。ウエスタン・リーグも3試合に投げたのみだったが、藤本監督は田上の直球にほれた。1軍先発を推薦し、この日のマウンドに送った。

「(先発は)支配下になった日に、藤本監督から教えてもらいました。『お母さんもみんな家族も呼んで。思いきってやれよ、頑張れ』と言われました。僕がマウンドで楽しそうにしているところを見てほしいです」

そう意気込んでいた田上の初陣を見ようと、スタンドには女手一つで育ててくれた母・由香さん(43)や祖父・則一さん(71)がいた。叔父で元ソフトバンク捕手の秀則さん(42=大産大付監督)も駆け付けた。「ただただ思いきってやるということだけです」。家族の応援が力に変わった。5回2/3を2安打無失点。期待を大きく上回る好投だった。「野手の方がたくさん声を掛けてくださったし、守備で助けてくれたおかげで0点に抑えることができたと思います」と笑顔だった。

0-0の6回2死二塁。中村奨を迎えた場面で、2番手の津森にマウンドを譲った。田上が放った75球に、球場からは温かい拍手が送られた。3年ぶりの長崎開催で、若き右腕が輝いた。【只松憲】

◆田上奏大(たのうえ・そうた)2002年(平14)11月26日、大阪市生まれ。敷津浦小2年で「バイキングジュニア」で野球を始め、オリックスジュニアでもプレー。住之江中では西成ボーイズに在籍。履正社では1年秋からベンチ入りし、3年春から投手転向。20年ドラフト5位でソフトバンク入り。背番号70。家族は母由香さん(43)と兄楓大さん(21)。座右の銘は「一事が万事」。185センチ、88キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸600万円。